ソフトウェア投資も広義には設備投資として捉えられ、その資産は償却対象となる。しかし、ソフトウェア投資が工場や機械への投資と異なるのは、それらを提供する企業がソフトウェアを無償にしようしており、かつそれをVCファンドが後押ししていることである。前回に続いて業務アプリケーションのオープンソース化について議論したいが、今回は何故その流れが加速しているのかについて考えてみたい。
見えない投資効果
無償化の一つの要因として、ソフトウェア投資は効果が測定し難く、ネットバブル期においては多くの企業を失望させて来た経緯がある。工場のラインを増設すれば、それは計画されただけの増産に繋がるが、ソフトウェア投資は目に見えるモノを作り出すわけでもなく、導入そのものが失敗に終わることも多い。
IT投資への目が厳しくなるなか、ITコストをビジネス規模に合わせて変動させることにより、ROIへのネガティブなインパクトを最小限に抑えることが可能となる。ライセンスの初期投資が大きい場合、そのビジネスへの貢献度合いが測定し難いだけに、その投資を正当化するのは益々困難となる。それゆえにライセンスコストを引き下げる圧力が強まり、その究極がライセンス料の無償化となる。
複雑化するアプリケーション
一方、アプリケーションの複雑さの度合いが増し、大企業向けのソリューションが中小企業向けには価格的にも機能的にもtoo muchな状況が生じている。CRMの領域が一つの典型でろう。業務アプリケーションの分野は既にシステム化が一巡しているという議論があるが、それはソフトウェア・ベンダーに更なる機能の高度化を強いることとなり、使いこなすこと自体が困難なアプリケーションを出現させる。それゆえにSalesforce.comのようなオンデマンド型サービスが登場したり、SugarCRMのようなオープンソース・ベンダーの参入が可能となるわけである。
複製コストがゼロ
ソフトウェアは複製のコストが限りなくゼロに近い。それゆえに、ソフトウェアベンダーには、投下資金の回収方法に自由度が生じる。受託開発であれば、案件毎にコストを回収しなければ、それを他で回収できる保障はない。一方、パッケージ・ソフトウェアであれば、一度開発が終われば、いくら複製してもコストはほとんど掛からない。それゆえ、一本売れる毎にライセンス費用を回収せずに、無償で提供することで顧客ベースを確立し、関連サービスで回収するという方法も可能となる。これは物理的にモノを作り出すビジネスにおいては困難なモデルである。
唯一の反スタンダード
Windowsに代表されるように、ITの世界はネットワーク効果が強烈に効くビジネス領域である。ユーザーが多ければ多いほど、その利便性は高まる。それがオペレーティング・システムであれば、よりユーザーが多いOS向けのアプリケーションばかりが増え続ける。そんななかで、既に独占企業が存在する領域で一企業が対抗するビジネス・プランは描き難い。その例外がオープンソースである。LinuxがWindowsへの最大の脅威であるように、ネットワーク効果が高いITビジネスにおいて、特定企業による独占を打ち崩す最後の切り札はオープンソース・コミュニティーと言えるかもしれない。
コラボレーション環境
アプリケーション開発がオンライン上のコミュニティによって可能である、という現在のコラボレーション環境がオープンソースを現実のものとしている。オープンソースを語る上では触れるまでもない前提条件かもしれないが、オープンソースがビジネスに影響を与えるまでに成長したのは、オンライン上でコミュニティを形成できるからに他ならない。
オープンソース化の流れをどう捉えるか
オープンソース化の流れを、ビジネス的な要請(投資効果、アプリケーションの複雑化)、ITビジネスの特性(複製コスト、反スタンダード)、テクノロジー(コラボレーション環境)という観点から捉えてみたが、ソフトウェアがアップフロントの投資に値するものであるということが明確にならない限り、オープンソース化の流れが止まるとは思われない。では、その流れをIT企業はどのように捉えるべきなのであろうか。
顧客主導のソフトウェア開発としてのオープンソース
一つの考え方を示すならば、オープンソース化は、ソフトウェア・ビジネスにおけるプロダクト・アウト型からマーケット・イン型への転換と捉えられる。つまり、ベンダー主導から顧客主導へと業界が転換するシナリオの中にオープンソースを位置づけるのである。
ライセンスの無償化は、ソフトウェア・ベンダーとユーザー企業との関係をトランザクショナルなものから、長期リレーションを前提としたものに変える。ソフトウェア・ベンダーは、短期的な利益よりも中長期での顧客満足にフォーカスせざるを得なくなる。そして顧客はオープンソースという、最も自らのニーズを反映させ易い環境を通して、ソフトウェア・ベンダーと協力して必要なものを手に入れることとなる。
オープンソースが自らのビジネス領域にまで影響を及ぼすことはないだろうとアクションを取らないこともありである。実際そうであるかもしれない。一方で、オープンソースの流れを、ソフトウェア企業への脅威とは捉えず、ベンダー主体から顧客主体のマーケットへの変化を促すものとして積極的に利用するというのも一つの考えである。
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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