久々に涙出るほどの肉体的苦痛を味わいました。3年前に4時間かけて下顎の親知らずを抜いたとき以来です。胃のレントゲン(バリウムを飲むやつ)で、胃と十二指腸にポリープらしきものがあるということで、胃カメラを飲むことになったのですが、これが実に辛かったのです。
まずは、小さい紙コップに七分目くらいまで入った、妙にまずい液体を飲みます。既に気分は沈み始めています。その後、マッサージチェアのような椅子に上体を45度傾けたくらいの状態で座るよう指示されます。すると、「はい口開けて」と言われたかと思うと、いきなりゼリー状の物体を口に流し込まれます。喉の麻酔だとかで、動かずにその液体を喉に溜めておくよう指示されます。今度はいきなり注射されます。こちらが動けないところへ「これは痛いですよ」とか言いながら、肩のあたりにずぶっときます。本当に痛いところが洒落になってません。これで準備完了。既に顔は苦悶の表情に変わっていますが、最近は胃カメラも随分楽になったという噂をまだ信じていたので、まだ気持ちに余裕がありました。
さて、診察台に横向きに寝ます。すると口にプラスチックの挿入口をくわえさせられ、そこから医者が胃カメラを挿入し始めます。しっかし、そのケーブル、かつてよく扱ってた同軸ケーブル並みの太さじゃないですか、先生!! あげげげげげ。。。げーげーぉとやってしまいますが、「腹式呼吸で押さえられるからねぇ、呼吸に集中して!!」と止める気配は一切ありません。目玉飛び出さんばかりで、すっかり涙目です。その後も胃までカメラが到達したあたりで、胃を丸ごと外に吐き出さんばかりに、ぐぉーぐぉーとすごい反射を起こしました。しかし先生、「声聞こえますか〜。聞こえなくなると、あっちの世界いっちゃいますからね〜」だそうです。気絶しちゃう人がいるんでしょう。
前置きが長くなりましたが、こういう肉体的な苦痛を自ら味わうと、Ambient Intelligenceへの期待感も膨らむものです。今回は、InformationWeek誌で見つけた、Rudy Lauwereinsの講演に関する記事が面白かったので、紹介してみたいと思います。
Ambient Intelligence
"Ambient"というと、どちらかというと音楽を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。"Ambient Music"といえば、環境音楽といったような意味で、静かな心を落ち着かせるようなものが多い。しかし、"Ambient Intelligence"と言った場合には、必ずしも静けさといった概念はない。欧州におけるナノテク、マイクロエレクトロニクスの研究機関であるIMECのRudy Lauwereinsは、"Ambienent Intelligence"を以下のように定義している。
environment, in which "secure, trustworthy computers and communications are in everything and everybody."
つまり、信頼のおけるコンピューターが我々自身の内部も含めてあらゆるところに遍在し、相互にコミュニケーションを行っているような状態を指している。日本では「ユビキタス」という言葉で表現することが多いかもしれないが、"Intelligence"という単語が付くと、コンピューターの遍在に加えて、そこから収集される情報の活用といった概念が加わってくる。
Giga-scale systems and Nano-scale devices
Rudy Lauwereinsの講演は、10月の5日〜6日にカリフォルニアで開催されたFSA Expoという半導体関連のカンファレンスにて行われ、"”Bridging the Gap Between Giga-Scale Systems and Nano-Scale Devices”と題されるものであった。"Ambient Intelligence"を実現しようとすれば、より小さいデバイスの中に、より高速なコンピューターを組み込む必要がある。講演のテーマはまさにそのギャップをいかにして埋めるかに焦点を当てている。
Lauwereinsによれば、"Ambient Intelligence"を実現するデバイスは、次の4つのテクノロジーによって実現されるとする。
-Ubiquitos wireless access (ユビキタス・ワイヤレス・アクセス)
-Sensors and actuators (センサーと駆動装置の高度化)
-Polymer electronics (ポリマーを活用した電子機器)
-Embeded computing (組み込み技術)
しかし、そのなかでボトルネックとなるのが、いかに消費電力を抑えながらコンピューティング・パワーを高めるかという問題だという。Lauwereinsはこの課題の解決には2つの方法があるとする。
More Moore と More than Moore
ムーア(Moore)の法則についてはご存知の方が多いと思う。Wikipediaから引用すると
ムーアの法則(ムーアのほうそく)とは、『半導体素子に集積されるトランジスタの数は、24ヶ月で倍増する』という経験則による半導体技術の進歩に関する予測である。
ということになる。さて、Lauwereinsは、消費電力を抑えながらコンピューティング・パワーを更に上げていく2つの方法を、"More Moore"と"More than Moore"という比喩的表現で表している。
"More Moore"とは、ムーアの法則を更に推し進めることを意味しており、即ち、トランジスタの集積度をさらに上げるということである。一方、"More than Moore"とは、ムーアの法則を超える、つまり、トランジスタの集積度向上という考えから脱却し、全く異なる方法でコンピューティング・パワーを上げていこうということである。
Mooreの法則の限界
Lauwereinsによると、ムーアの法則を更に推し進める"More Moore"は、技術的には可能でも経済性において破綻すると予測している。つまり、これ以上集積度を向上させようとしても、費用対効果が見合わなくなりつつあるということである。一方、"More than Moore"を実現する新しい技術の実用化が進みつつあるという。具体的には、Passives(受動部品), MEMS(Micro Electro Mechanical System), バイオセンサー, 流体工学を活用したものになるということだが、正直、それぞれの中身は私には良くわからない。
テクノロジーのブレークスルー
中身は良くわからなくても、感じ取れるのはテクノロジーのブレークスルーが起きようとしているのではないかという予感である。基礎技術というのは、その発展の成長曲線が緩やかになってきたところで、その延長線にはない新しい技術へのジャンプが求められる。ITの世界はこれまで"More Moore"で頑張ってきたのであるが、"Ambient Intelligence"が"More than Moore"で実現されるとき、ITの世界にも新たなビジョンが生み出されるに違いない。我々が「ユビキタス」を語るとき、今のところは既存技術の延長線と捉えているが、もしそれが全く新しい技術によるものならば、その先の展開は我々の想像を超えたスピードで進むかもしれないのである。
さて、余談ではありますが、あれだけ苦しんで胃カメラを飲んだ結果、「きれいなもんだね。何にもないよ。」で終わってしまいました。ポリープがあると言われたときには、やっぱりIT業界のストレスは酷いものであるということが証明されるのかと思いましたが、どうやらまだまだ頑張れるようです。でも早く胃カメラの世界にも"More than Moore"をと願うばかりです。
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
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