サンフランシスコにて開催されたオープンソース・ビジネス・カンファレンスにおいて、SAPのマーケティング担当役員であるPeter Graf氏が、オープンソースのビジネス・アプリケーションはいずれ使われなくなるだろう、という主旨の発言を行ったというニュースについて。
その発言
ZDNetUKによると、Peter Graf氏の発言主旨はこうだ。企業統合が進み、顧客企業によるサプライヤーの絞込みが進むなか、オープンソース・ビジネス・アプリケーションは利用されなくなっていくと考えられる、と。ZDNetの原文は以下の通り。
A wave of consolidation is sweeping the IT industry, and many open source business applications will be left behind when customers pare down their suppliers, an SAP executive predicted Wednesday.
記事にも書かれているが、ERP領域のオープンソースというと、CompiereやOpenMFG、CRM領域ならSugarCRMといったところが知られている。一方で、商用ERPに限れば、Oracle陣営が買収の混乱に揺れる中、SAPが一人勝ち続けているといった構図である。
Oracleとの対比
Oracleは、データベース・レイヤーからアプリケーション・レイヤーへ進出しつつあるが、データベース・レイヤーにおいてはオープンソースの脅威への対策を打っている。その手法の良し悪しはここでは議論しないにしても、エントリーモデルの無償化や、MySQLを取り巻く最近の話題は、明らかにオープンソース・データベースを意識したものである。
また、OracleがFusion MiddlewareのSAP対応をしているあたり、プロプリエタリーな領域の構築による囲い込み路線から、徐々にオープン路線へとビジネス・モデルも転換を図りつつあるように見える。
SAPはオープンソースにも勝つのか
一方、SAPの強気発言は、当然ながら自らのビジネス・パフォーマンスに対する自信から出ているだろう。それも発言の場がオープンソース・ビジネス・カンファレンスなのだから大胆この上ない。ZDNetのオープンソース・ブログも否定的な反応だ。
しかし、Peter Graf氏の発言は、オープンソースの力が高く評価されている今だからこそ、改めてオープンソースの真価を考える機会を与えてくれたものとも捉えることも出来る。OSのレイヤーから徐々に上がってくるオープンソースの適用領域が、本当にビジネス・アプリケーションの領域においても広く受け入れられるようになるのか、という議論である。
アプリケーションは、ビジネス・ソリューションに近づくほど、その実現機能はニッチになり、ディベロッパーの関心を広く集めることが困難になる。であれば、企業がオープンソースとしてコアを開発し、エクステンションをユーザー企業やITベンダーに任せるようなモデル、あるいは、全て企業が開発し、ライセンスを無償にしてサポートで収益を上げるような、サブスクリプションに近いモデルの方が現実的であるかもしれない。
また、オープンソースが適するか否かは、顧客側の市場構造も影響してくるだろう。あまりに大手と中小の要求機能が異なれば、一つの商用ソフトがその全てをカバーすることは困難になる。SAPも中小へと攻勢を強めているが、そのレイヤーの要求機能がオープンソースで十分に満たされるとすれば、オープンソースが中小企業のレイヤーから徐々に攻めあがってくるシナリオも考えられる。
とは言え。。。
ここで、何か結論を導こうとは思わないが、Peter Grafの発言にある、IT企業の統合がオープンソースを劣後させる、というのは間違いであると思う。ERPのようにサプライヤーの選択肢が極端に減ってくると、顧客は特定ベンダーへのロックインが強まるため、オープンなものへの期待感が高まる。ゆえに、サプライヤーの減少というのは、むしろオープンソース登場の素地を作り上げることになる。つまり、SAPの強さそのものがオープンソース登場の素地を作り上げているとも言えてしまうのである。
※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。
- 前のエントリー: ○○○主催の『Developers' Lounge』
- 次のエントリー: Oracleもオープンソースに負けないか
「エンタープライズニュースの読み方」 のバックナンバー
-
「スーパーマーケット・バンキング」の逆襲と「青物」の定義
いよいよ青物の季節が到来し、久々の大漁。釣りから帰ってスーパーへ魚を買出しに行く必要も無かったのである。さて、スーパーマーケットと言えば、英国のテスコ(TESCO)がロイヤル・バンク・オブ・スコットラン... -
A380に乗ってみた
-
上達しない英語術
-
「金融民主主義」が金融サービスの向上を促す
-
ヨーグルト戦争とプライベートブランド
- エンタープライズニュースの読み方 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
【おススメのIT求人情報を掲載中!】
業界を代表する各社のインタビューも公開中 -
ERPは企業の期待に応えたか?
ERPの導入に迷われている方はこちらへ
企画特集
-
REAL IT COOL PROJECT
地球環境にやさしいITプラットフォームを目指して -
価格から質へと変わるアウトソーシング市場
多様化ニーズに応えるマネージドサービス -
日本企業が抱える3つの課題とは?
それに答えるインフォアのソリューションを紹介!! -
日々のルーチンワークを自動化する方法
JP1での業務自動化 → コスト削減+企業力アップ -
二度手間とミスばかりのデータ管理は嫌だ!
Webデータベース「働くDB」でカンタン業務改善! -
グリーンデータセンターの新潮流
GreenITの国内外の今の動向がわかる! -
ビジネスでも使えるスマートフォンアプリ
オンでもオフでも使える!充実のアプリケーションを紹介 -
あの開発者の仕事が早いのはなぜ!?
C/C++の開発を効率化する究極のツールはこれだ! -
17年ぶりに進化したファイアウォール
750以上のアプリケーションを識別してブロック -
ネットビジネスの変遷とサーバ管理の変化
CNET Japan編集長が聞く、アウトソーシングの有効性 -
情報大洪水時代を生き抜くソリューション
最新の企業内検索ツールでビジネスプロセス改善 -
これからのERP・CRM・SFAの姿とはー
種類・提供形態・価格の多様化で選択肢が広がっている -
次のキーワードは、SOIとITFM
カスタムメードのグリーンITのススメ -
所有から利用へ。拡大するiDC市場
サービス開始から12年!信頼のさくら -
レプリケーションによる災害復旧対策!
日本CA ARCserve Replication -
ERP,CRMのレスポンスの遅さを劇的改善!
リバーベッドのWAN高速化を徹底レポート -
大規模システム対応のホスティングとは
SNSや動画共有サイトにも活用されています! -
MicrosoftもOracleもDWH市場に参入!
3年間で40社以上への国内納入実績を持つ強みを解説 -
メーカー型番で選べる専用サーバ
料金改定!よりお求めやすい価格に! -
運用管理こそ業務の背骨
メール・情報共有をシステムダウンから守る運用管理 -
なぜ、ERP 導入は敷居が高いのか?
【事例】マイクロソフトのERPによる日本の商習慣対応 -
エンタープライズサーチ特集!
ConceptBase、SMART/Insight、Accela BizSearch
-
マルチコア – インテルがどのようにそれを機能させ重要なものにしているか
2008年11月4日 -
マルチコアの考え方で設計を始める時期は早すぎることはない
2008年11月4日
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
