Oracleの全方位作戦

April 30, 2006 7:59 PM
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動きが活発なだけに、ついついOracleを取り上げることが多くなる。今回話題にしたいのは、OracleがPeopleSoftやSiebelなどのサポート継続を発表したという話と、Linuxのディストリビューションを計画しているという話

全方位作戦
Oracleのコア・ビジネスはデータベースである。ここ数年は、ソフトウェアのレイヤーを垂直に駆け上がり、PeopleSoftやSiebelに代表されるビジネス・アプリケーションの買収を手掛けてきた。

では、コア・ビジネスから脱却を図ろうとしているのかと言えば、そうとも言い切れない。オープンソース・データベースであるInnobaseの買収や、インメモリ・データベースのTimesTenの買収は記憶に新しいところだ。また、Oracleがオープンソース・データベースのMySQLへ買収を仕掛けたという事実もある。つまり、水平方向の動きも活発なのである。

そして、今回明らかになったのが、垂直方向を下に向かう動き、つまりデータベースのレイヤーからOSのレイヤーへと進出しようという意図がOracleにあるということだ。こうしてみると、Oracleはソフトウェア・ビジネスの領域において、全方位へ戦線拡大を図ろうとしているようだ。

全方位作戦の難しさ
しかしながら、当初2013年までに新版開発を中止する予定であったPeopleSoftやSiebelなどのビジネス・アプリケーションを、それ以降も維持せざるを得なくなったことは、全方位作戦の難しさを象徴しているように思える。

Oracleとしては、Fusion Middleware上に、技術的には疎であっても、概念的には密に統合されたアプリケーション群を構築したいはずだ。それによって、顧客をOracleの世界にガッチリ囲い込むことが可能となる。こうした囲い込みが必要となるのは、データベースからアプリケーションへと戦線を拡大したことにより、アプリケーション・ベンダーと正面から戦う必要が生じたからだ。

この戦いを最も象徴するのがSAPとの競合であり、今回のサポート延長の一因もSAPによるプレッシャーである可能性が高い。なぜなら、OracleがPeopleSoftやSiebelに買収を仕掛ける都度、SAPはそれらのアプリケーションから自社製品へ乗り換えを促すマイグレーション・プログラムを積極展開してきたからだ。

そして、OSのレイヤーもデータベースとは補完関係にあり、Oracleが特定のOSを支援するとWindowsや他のUnix OSのベンダーともコンフリクトを起こすことになりかねない。その点において、OracleとしてOSレイヤーにどのように取り組むかは、慎重な判断が求められるだろう。

別の見方をすると
ここまでは、オラクルの戦略を垂直と水平という切り口から見てきた。しかし、別の見方をすると、クローズとオープンという切り口でも分析することが出来る。つまり、PeopleSoftやSiebelの買収はクローズド・ソフトウェア領域での展開であったが、InnobaseやLinux、あるいはMySQLへの買収打診はオープンソース・ソフトウェア領域への展開であるという見方だ。

こうした見方をすると、今度はソフトウェア・レイヤー間のコンフリクトではなく、クローズドソースとオープンソースのコンフリクトという観点で戦略上の課題が浮かびあがってくるだろう。こうなると、もはやソフトウェア企業の戦略は平面上のマトリックスでは語ることが出来ず、立体図を描かねばならない。さらに言えば、ソフトウェア・ビジネスにおいては、サービスかライセンスかという問題も近年重要なテーマだ。もちろんOracleもその影響からは無縁ではない。

とはいえ、戦略はシンプルでなくてはならない。Larry Ellisonがどの軸を中心に据えて戦略を練っているのか、興味深いところである。もちろん、これらとは全然違う角度からものを見ているかもしれないが。

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プロフィール
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。92年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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