「夏バテにはカレー」であるとのセオリーに基づき、1年前の夏からカレーを食べ続けた結果、今年の夏は太ってしまい、かえって夏バテしたのである。特に会社の近所にTikka & Biryaniというナンがひと際うまいインドカレーの店が出来たことが、全食生活に占めるカレー度を著しく増幅させ、体型を変化させるに至った。そこで今年の夏休みはカレーを抑制し、体型を元に戻すことに腐心することで大半を費やしたのである。要するに極端すぎるのはいかんのである。
さて、元Harvard Business Review誌の編集者であり、「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい (Does IT Matter?)」の著者であるニコラス・カー氏の記事を目にした(ZDNet Japanにもその一部が紹介されている)。記事のタイトルは"Ten tips for reducing burgeoning IT costs"。日本語にすれば、「膨張するITコストを削減するための10のヒント」といったところだろうか。そこには現在技術的に現実的となりつつある方法が展開されている(日本語訳は筆者)。
1 Consolidate (統合せよ)
2 Virtualise (仮想化せよ)
3 Go open source (オープンソースを活用せよ)
4 Buy software as a service (ソフトウェアをサービスとして利用せよ)
5 Buy hardware as a service (ハードウェアもサービスとして利用せよ)
6 Think thin (シンクライアント化を推進せよ)
7 Conserve power (消費電力を抑えよ)
8 Offshore work (オフショアを活用せよ)
9 Avoid customisation (カスタマイズはするな)
10 Procrastinate (投資を先延ばしにせよ)
サーバー統合、OSの仮想化、オープンソースの活用、SaaSなどなど、最近重要なキーワードが整理されて並んでいる感がある。そして、原文では、ぞれぞれについての解説と事例の紹介がある。が、全体に渡って何か納得感が出ないのは、一番最後の「投資を先延ばしにせよ(Procrastinate)」があるせいだろう。実はこの最後の項目にこそ、全体を貫くニコラス・カー氏の考えが潜んでいる。
前著の「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」でも顕著であったが、ニコラス・カー氏のスタンスは、ITによる競争優位というのは幻想であり、いかにリスクを抑えて枯れたテクノロジーを活用するかを考えるのが企業としての正しい選択だとするものだ(以前書いた書評はこちら)。本を出版する前に、同じテーマの記事をHarvard Business Reviewにも執筆していたが、これは激しい論争を巻き起こした。これはとりもなおさず、ITはコモディティであるか否かという議論へと繋がり、IT企業の競争戦略をも大きく左右することになるからだ。
確かに、ITセクターではM&Aが活発であり、寡占化へ向かいつつあるのも事実である。これは、ITがコモディティ化し、スケールのビジネスへと変化しつつあることを暗示しているとも言える。では、企業ユーザーがITを戦略的な武器として使うことを止めているかと言えば、そうではないというのが実感である。
現実には同一企業の中に、業務としてコモディティ化が進行している部分と、コア・コンピタンスとして定義される部分が同居している。コモディティ化が進行している部分については、当然ながらニコラス・カー氏の議論が当てはまるであろう。一方で、ITの積極活用を戦略として捉え、他の企業システム(組織、人事、文化など)をそれに一致させる限りにおいて、上記の1〜9はコスト削減ではなく、戦略的な投資となり、10が付け加えられることはない。
要は、ニコラス・カー氏は常にある側面を捉えて極論をしているということが言いたいのだが、ある側面においては真であるだけに、議論としては大いに刺激になるのである。そのせいか、せっかく体型を元にもどしつつも、来週にはカレー宴会が予定されているのである。
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