オープン化で成功したイギリスの金融政策
イギリスは、1980年代に実施した金融政策において、外資を積極的に受入れることでシティの活性化を図った。結果として旧来のマーチャントバンクは衰退したものの、ロンドンは金融センターとして大いに発展を遂げた。
ウインブルドン現象とも言われるこの発展モデルは、ある意味プロプリエタリー(英国固有)を捨ててオープン化(外資受入)を促進するものだ。つまり、オープンなプラットフォームを提供することで自国企業だけではなく外資企業も活躍できるようにするわけだ。即ち、イギリスは金融政策としてプラットフォーム・ビジネスを選択したとも言える。
これは最近のITビジネスとも対比できる点が面白い。つまり、オープンなプラットフォームを提供することで自社のみならず他社のアプリケーションも動くようにしてしまう、といった感じである。それによってより多くの人が使ってくれればプラットフォーム・ビジネスとしてビジネス・ケースが成立するのだ。
イギリスのオープンソース・アレルギー
ところで、イギリスのパブリック・セクターがオープンソース・アレルギーを示しているという。金融政策において極めてオープンな国なだけに、その対比が面白い。しかもパブリック・セクターだというからなおさらだ。このCBRの記事(”UK public sector views open source as too risky”)によれば、問題が起きたときに誰が責任を取るのかが明確でないことが課題として上げられている。これはしばしばオープンソースに欠ける主体性の問題だ。オープンソースのCMSベンダーであるAlfrescoのCEOは次のように言っている。
He said it took a brave procurement guy six months to persuade people to choose Alfresco enterprise content management offering, and only after 26 proprietary vendors were shown to be unfit for requirements.
オープンソースを選択するという行為がイギリスのパブリック・セクターにおいて、まだまだハードルの高いものであることを伺わせる。
しかし、この問題はイギリスのパブリック・セクターがオープンであるかどうかという問題ではない。事の本質は、オープンなアーキテクチャーを持つオープンソースの主体が不明確と見られてしまっているということだ。金融政策においてはオープンなプラットフォームの提供主体は英国政府であったが、オープンソースでは誰なのかという点が明確でないために素直に乗り切れないというわけだ。
Sunの対Linux戦略から学べること
オープンソースとしてスタートしたLinuxに対し、戦略的にオープンソースとなったSolaris。この両者の違いは開発主体の明白さの違いであるとも言える。つまりOSというプラットフォームの運営主体としてどちらが明確であるかという事だ。そのSolaris 10の最新バージョンにLinuxソフトウェアを稼動させる機能が搭載されたという。当然Linux側へ流れたユーザーをSolarisへ呼び戻すための戦略的機能であろう。
しかしながら、正直どちらが強いのかは判らない。イギリスのパブリックセクターのように、保守的なシステム基盤選びを主軸に置けば、Solarisの方が安心できる選択肢なのだろう。一方、Linuxのように大手ベンダーを含む開発リソースを取り込み、商用バージョンとサポートサービスの提供者を複数抱えるまでに成長したLinuxにサポート主体がいないとは言い切れないだろう。
とはいえ、イギリスのパブリック・セクターのオープンソースへのスタンス、またSunによる対Linux戦略から感じられることは、オープンソースがオープンソースであるが故のガバナンスや戦略的施策の重要性を物語るものである。つまり、プラットフォームとして安心できるのか否かという点である。イギリスの金融政策も、単純にオープンにしたものではなく、それを支えるインフラを整備した上でのオープン化であった点において多分に戦略的であったのである。
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