タイトルと話題が違いますが、ホットなニュースが入ってきましたね。ITILの上位規格であるBS15000がいよいよ2007年秋をメドにISO化されることが決定しました。第11回目には規格関連の内容も掲載する予定ですのでお楽しみに。
さて本題に戻りましょう。
数年前までの日本国内のITIL成功事例を見てみると、自ら行っていた運用改善の取り組みが自然とITILで記載されている内容とマッチしていたとか(これは凄いことです!)、ひどい場合には後からITILとってつけたような事例とかが多かった気がします。昨年末くらいから、初期段階からITILという切り口で運用改善を開始し、成功を収めたというケースも随分増えてきたと感じています。事例が掲載されている資料をお持ちの方は数年前の事例と昨今の事例を比べて頂けるとそれが実感できるのではないでしょうか。
当然、成功の陰には数多くの失敗もあるわけで、失敗に関してどのような兆候があるかブライアンより頂いた資料を咀嚼しながらお話したいと思います。
・ITILのためのITIL
・ITILに一字一句従う
・ツールハント志向
・書類作成
1.ITILのためのITIL
ITILそのものが目標となってしまう。事例が紹介されているから我が社でもITILを導入しよう、というもの。「ITIL準拠」を掲げ、その内容を実行することを見失ってしまう。ITIL準拠のためにオーナーがあてがわれますが、オーナーは責任や権限を持たず、自分が何のために活動しているのかを徐々に見失っていきます。いつの間にか報告書を作成することが、エスカレーションをすることがゴールとなって行きます。もちろんサービスの品質は実際には改善されません。
2.ITILに一字一句従う
ITILが聖書となります。その教えは聖なるものこの本にこう書いてある、だから一字一句従わなくてはならないのです。効果・効率を追求するためにプロセス・プロシージャをちょっとでも改善しようとすると異端児扱いを受けます。提言しようものなら「この本にはこう書いてあるのに、なぜそんなことをしなければならないんだ!」と出る杭は打たれていくわけです。組織は硬直化し、誰もが改善のサイクルを回すことを避けるようになっていきます。
3.ツールハント志向
すべての問題はツールが万事解決する、という考え方が広がっている状態です。ITILを開始すると決まった瞬間、「ではどのツールを使えば良いか?」といった話に終始します。オーナーシップやプロセスが明確に存在せず、徐々にツールを使用できる人が限られてきます。ツールを使用できる人がいなくなったら新たなツールを探し始めます。ツールの使用状況についてヒアリングを行ってみると使われているのはツールの機能のうち1、2割だったりします。
4.書類作成
ITIL書籍(特にサービスデリバリ)に書かれた内容に基づいて莫大な経費を費やして大量の計画書、レポートが作成されます。詳細まで記載された大量の資料には皆閉口します。「で、これは何が書いてあるの?」と。最初は一通り目を通したりしてみますが、そのうち誰も資料を読まなくなっていきます。しかも、大抵はオーナーシップも不在です。
この4つの兆候を鑑みると「オーナーシップ」「目標」「重要業績評価指標(KPI)」の欠如、もしくは、曖昧さが共通の問題として浮き彫りになってきます。これは以前ご紹介したプロセス・モデルのプロセス・コントロールの箇所に相当します(関連記事)。
確かに私の伺った成功事例のほとんどでは上記の項目が非常に明確に定まっていました。上位マネジメントが率先してプロジェクトや定期レビューに参画したり、メンバが同じ目標を共有していたり、明確でブレの少ないレポートの作成を行っていたりと「オーナーシップ」「目標」「KPI」が非常に明確になっていました。逆に上手く行っていないケースですと、オーナーと目される方はキックオフに参加しただけとか、マネジメントと担当者で認識している目標が異なっていたり、レポートの項目が毎回変わったりしたりする傾向があったように考えます。以上よりプロセスのアクティビティやプロシージャの定義、実装前に「オーナーシップ」「目標」「KPI」の3点を定義、メンバ全員に周知徹底することで失敗を少なからず食い止めることができるのではないかと考えています。
ちなみに私自身の経験では構成管理について特にその傾向が強くスコープが広がり過ぎて収拾がつかなくなっているといった話をよく伺います。
ITIL書籍の面白いところとして、単に「何々の活動は○○と××」といった紋切り型の記述だけでなく、「起こり得る問題」や、「助言」「例」など泥臭い記述が行われていることが挙げられます。これらは先人の方々が数々の成功・失敗を繰り返しながら生み出してきた教訓であり、その内容ゆえに記述内容に厚みが増し、多くの方々に支持されつつある所以かと思います。
(まあ、その分書籍も厚みが増して読みにくいと言われているのも事実ですが…)
まだ書籍をお読みでない方は、一度じっくり書籍を読んでみてはいかがでしょうか?
三部 佳彦
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