前回は包括的な話でしたが、今回は書籍の内容で、私が特筆すべきことだと思ったことを記述していくことにします。
■ITILのコア・モデル
V2のジグソー・モデルから“ITIL Core”になりました。
中心に“Service Strategy”が位置づけられ、これはいろいろなビジネスに対応できるように考慮されたモデルだそうです。戦略自体が、状況や提供業種によって種々あるが、ガイドに従って推進されることが望まれています。この戦略の周りを、“Service Design”、“Service Transition”、“Service Operation”が囲みながら回ります。その外側を”Continual Service Improvement”が動き続けます。
ライフサイクルを時系列であらわしたものを、PDCAサイクルと合わせこんだイメージでしょうか。いろんな状況の路面を走る車のタイヤみたいに、いろいろなところに使えるが、その解説書になるのが、ITIL V3の書籍ということでしょうか。

■記述項目とレベルの統一
どの書籍も、記述項目とレベルが統一されたと思います。
V2の書籍では、プロセスごとの記述レベルが揃っていなかったことが理解の妨げの要因のひとつであったように思います。どの書籍も3レベルの階層で記述されています。また、階層を構成する項目が統一されているので、ライフサイクルに沿った理解がしやすくなっていると感じました。V2では、個々のプロセスを理解するのが大変でしたが、関連するプロセスやファンクションを俯瞰できるように記述してから、詳細記述になっているので、プロセス間の関連が把握しやすいと思いました。
■用語の定義の徹底
V3ではプロセスで使用するに当たって、従来混乱を招いていた用語の定義をしてから、とファンクションについて定義を明確にしたうえで記述しています。用語の定義がプロセスによって微妙に異なったり、手順が変わったりということが回避されたようです。V2でもありましたが、より充実した用語集が、各巻末に付いています。変わったのは、2色刷りになったので、他の掲載用語がわかるようになっているところです。
■独立した書籍としても読める
ライフサイクルの視点で記述されているということで、5冊の書籍で一纏まりのイメージを持っていたのですが、どの書籍も、その書籍だけ見ても理解できる纏まりになっています。序章のあたりで、まったく同じものが20数ページにわたっている、といったことはないようです。重複している部分はありますが、共通の認識、共通の定義に該当する、どの分野でも必要な部分だけのように見えました。イントロダクションにおいても、各書籍の位置づけが明確に示されているので、取りつきやすいと思いました。
■他分野との用語の統一化
今回のリフレッシュでは、ITILの世界だけではなく、プロジェクトマネジメント、ガバナンスをはじめとして業務プロセスなどの他の分野との用語ならびに定義が統一されてきているように見えました。その分、翻訳の用語調整にかなりの労力が裂かれそうだと感じています。
■ビジネスとの統合化
前回の包括的な解説の中でも記述したことですが、ライフサイクルの視点から見ることによって、ビジネスとの統合化が進むように思われます。各書籍の段階でもビジネスについて言及しているので、以前のような、戦略、戦術、運用といった階層的な見方からではなくなっています。システムやアプリケーションごとに運用を考える、ということではなくなっています。ITサービス全体としてビジネスと相乗効果が出るように考えるということを目指しているようです。複合的に存在するものを最適化するために全体的に考慮していこうという姿勢に見えます。そういった意味では、統合というよりは、 “Unify and Optimize”というところでしょうか。
■Appendixの充実
ITILは参照すべきもので、そのまま使用できるものではないというようなことが言われていました。組織ごとに、ビジネス、ITスキル、プロセス成熟度業務要件といった、どれをとっても同じものがないのに、同じものが使えるはずがありません。しかし、実績があるものが、整理され、理論化され、体系化されれば応用は利くものです。種々の計画書、コミュニケーション用文書、レコードの項目などサンプルやテンプレートがAppendixとして提供されています。導入時点の時間短縮に役立つ、と期待しています。現状うまく回っている業務を、テンプレートや手順書の例に合わせなおすことが、ITIL準拠、ITILの導入ではありません。くれぐれもお間違いの内容にお願いします。
■プロセスの増加
V3ではプロセスが増えました。ちょっと観ただけでも、“Event Management”、“Service Catalog Management”、“Supplier Management”といったところが増えています。またファンクションも増えています。この辺の詳細は、また別途ご案内させていただきたいと思います。
結論として言えることは、枝葉末節にあまりこだわる必要はなく、ビジネスとITサービスを一体として考えていく大局観が必要だということでしょう。
前田 隆
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