今だからこそ Excel

2007年10月22日 18:00
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先日、「日経コンピュータ フォーラム 2007」 のあるトラックで、パネルディスカッションに登壇してきました。その名も “内部統制の穴、「現場の Excel 資産」 を見直す”。日経コンピュータは基本的にマイクロソフトにあまり優しくないメディアなので、最初に打診を受けたとき正直引きましたが、私がこの業界に入るきっかけともなった Excel がもし陰口でもたたかれたら悔しい、ということでお引き受けした次第。内容についてはそのうち日経コンピュータさんのサイトに公開されたりするでしょうから、ここではないしょにしておきますが、あえてこのエントリーを作ったのは、手前味噌 (といっても別に私がコーディングしたわけじゃないですが) ではありつつも、やっぱり Excel ってすごいな、これからこそ Excel の時代だよなあ、ということが、自分の中でかなりはっきり意識できたためです。

Excel のすごさは、最強の エンドユーザ コンピューティング ツールであること。関数やマクロでユーザーが自分の欲しいアプリケーションを自分で作ることができる。コンピュータは本質的に計算機ですから、計算ソフトである Excel は開発環境としてもってこい、なわけです。だとしたら、より効率的で簡単な開発言語が登場したら代替されるのでしょうか?AJAX?マッシュアップ?いや、それは無いですね。少なくともマッシュアップが単なる API 経由での結合である以上は無理。
それとも関連するのですが、もう一つのすごさを、パネルで受け答えしていて理解しました。Excel は、あ、いや、Excel と呼ぶのが気に入らないのでしたらスプレッドシートでもいいんですが、人間のものの考え方にすごく近い使い方ができるのです。IT のくせにヒューリスティック (用語は第2回参照)。Excel シートはある種の巨大なメモリー空間で、セル 1つ 1つが変数です。ただし事前に型宣言する必要はないし、配列組み替えも思いのまま。だから、使うかどうかわからない情報を “とりあえず” 置いておける。型もリレーションもへったくれもないけど、なんとなくつなぎ合わせられそうな情報を並べて眺めてみたり、強引に足してみたり掛けてみたり。必要な時に取り出せるし、一生使わないかもしれない。IT のくせに、そんな人間のいい加減さを許すのです。これは業務システム、いや Access ですらあり得ない。でも電子ファイルだから、まるごと誰かに渡せるしコピーできる。アプリだから、少々頑張ればシステムにもつなげる。まあ最悪でも CSV で吐き出すから、後のことはよろしく、ということで。

ERP やら CRM やら SCM やらの基幹システムが、企業のビジネス モデルを支える骨だとすれば、Excel は現実世界と接している肉というところですね。ネットワークやら電子メールやらが神経。骨はもちろん最も大事なんだけど、でも骨だけじゃ歩けない。脂肪があるから外部環境から守れるわけだし、筋肉があるから動けるんだし、皮膚があるから外部の情報を検知できるわけなのです。

内部統制上のリスクだから Excel 排除しようなんて言っている人は、情報が価値を生み出すプロセスの本質が理解できていない。それに、いくらシステムでがちがちに統制したって、ユーザーは絶対運用で回避します。おお、そう来たか、みたいなすごい知恵をひねり出すものです。過去に何度も同じようなことあったじゃないですか。“Excel = 便利だけど危険” と “xxシステム = ちょっと不便だけど安全” という 1:1 の対立軸で見れば、そりゃ今の状況、安全を取るでしょう。だけど、危険性をちゃんと切り分ければ、Excel のままだってほとんど解決できるし、何も特別なことなんてありゃしない。過剰にリスク回避したがる会計士の言葉のマジックに引っかかっちゃいかんのです。だいたい Web インターフェースだけで業務なんかできるわけないじゃないですか。システムに入力する前段階でのごちゃごちゃとしてあいまいな調整はどうするの?1 年後には確実に Excel を使った運用で回避されますよ、賭けたっていい。これについて言いたいことはたくさんありますが、ぜんぜん BI じゃなくなるので、ここではやめておきます。

このように理解していくと、Excel が BI のフロント エンドに適しているのは、至極当たり前のことだと思えてきます。BI ってグラフ作るだけじゃないでしょ?グラフ作る前には、そこに至るまでにうだうだと非構造的に考える段階が、必ずある。データだって、あらかじめきれいに用意できているわけない、どんな使われ方をするかはあらかじめ分からないから。グラフを作った後も、コメント入れてみたくなったり、ちょっと手ごころ加えてみたくなったり。印刷したいし、メールでも送りたい。そう、結局作ってみないとわからないのがレポートなんです。そんな先の読めない一連の作業の中のあくまで一つの要素として BI という素材があるだけで、わざわざそこだけ切り出せない。Excel は頭脳の延長だからそれが全部できちゃう。グラフだけ急に別のところで作んなきゃいけないとなれば、データもきれいにしとかなきゃいけないし、ほしいグラフも先に考えとかなきゃいけない、つまり思考が中断されるのです。つまり、情報がこれだけあふれかえる時代になってきたからこそ、Excel の価値が高くなる。

私が最初の会社、証券会社で営業していたころ、差別化のために顧客向けの投資分析レポートをパソコンで作ってみようと思いたち、IBM の PS/V Vision という、CRT 一体型の Windows 3.1 マシンを買ったのですが、そこで Excel、当時バージョン 6 だったかな、で簡単なマクロを組んで、簡単に A4 一枚の投資分析レポートを作れるようにしました。これが取引先の IT ベンチャー企業の社長の目にとまり、後にその会社に移ることになったのです。もちろん若かった、っていうこともありますが、高校、大学と文系の証券マンでも目的意識を持てばなんとかそのぐらいは覚えられる、それが Excel のすごさだと、その当時も、また何の因果かその Excel の担当プロダクトマネージャーになった今も、感心しきりです。だから Excel の悪口を言う人は私が許しません。

米野宏明@マイクロソフト

※ 本エントリーの内容は筆者個人の見解に基づいており、マイクロソフトの見解を示すものではありません。


追 記

11月30日にお台場のホテル日航で Microsoft BI Conference を開催します。Excel を中心とした BI のセッションや、スプレッドシート統制の事例セッションも実施できそうですので、ぜひご来場ください。

ご登録はこちらまで http://www.event-information.jp/events/bc07/。
または上記の私のサインをクリックしていただくと社員ブログに飛びますが、そこにもイベントバナーが貼ってあります。

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プロフィール
米野宏明(Hiroaki Komeno)
マイクロソフトのBI関連製品担当プロダクト マネージャ。慶應義塾大学商学部 卒業後、直接金融時代の到来を予期して証券会社に入社するも、時代が早すぎた ようで3年で挫折、手に職をつけるため一念発起してITベンチャーに転身。デー タベース製品の営業、マーケティング、SEと幅広く経験するも、当該製品の開発 元が買収されたことをきっかけに諸事情あってやむを得ずマイクロソフトに移籍。 チャネルマーケティング、コンサルティング営業を経て現在に至る。経産省認定 テクニカルエンジニア<データベース>。日本CFO協会主任研究委員。
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