個人知性と組織知性

2007年10月01日 18:30
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前回のエントリーで、「日本人は個性を磨くより組織力を磨いたほうが」 と締めくくりましたので、組織力についてもうちょっと掘り下げてみたいと思います。

組織力といえばサッカー、日本サッカーといえば 「決定力不足」 (またも詳しくないスポーツ、認識不足があったらごめんなさい)。以前、日本の有力なサッカープレーヤーの多くがミッドフィルダー (MF) なのは、テレビアニメの影響だなんて聞いたことがありますが、真偽のほどは確かめたことありません。ただ、プレーヤーの育成という観点では、まず MF として育てたほうが、つぶしがききそうなのは確かです。フォワード (FW) とディフェンダー (DF) ではだいぶ性格が違いそうですけども、MF なら、なんとか両方に対応できそうな気がします。

組織力を鍛えるには、みんながいろんなことを理解しておいたほうがいい。MF 経験者なら DF からパスを受けるし FW にはパスをするしで、他の人の動きがだいたい分かるはず。それにオールマイティなゼネラリストなら、何をやっても及第点がとれます。でも決定力をあげるには、FW 職人を増やしたほうがいい。DF の気持ちは理解できないかもしれないけど、自軍のピンチの時に自陣に戻らないかもしれないけど、でも決定的なチャンスは外さない人。あの分野なら、あいつには誰もかなわない、という存在ですね。個性と組織力って、こんな風にある程度トレードオフの関係にあると思います。体格やパワーに劣る日本人がサッカーで諸外国に勝つには、組織力のほうを重視したほうがいいかもしれないし、決定力不足はその結果かもしれない。いやぜんぜん違うよ、ということでしたらぜひご指摘ください。

もちろん日本人には潜在的に個性がないとかイノベーション力に欠けるとか、決してそんなことはないと思います。教育も含めた人材育成の方向性がそうさせているのであって、素質ではなく、各個人に均一に刷り込まれた経験なのではないかと。たとえば、「チームワークを強化しよう」 なんて言ってみると何となくよさそうな気がするし、もちろん誰も反対したりはしないですよね。でもチームワークって何だっけ?なんて突き詰めてみるとせいぜい、みんな仲良くなって元気に会話しろ、程度の話だったりする。チームワークはいいこと、という刷り込みがあるだけで、そこには具体論なんて何もない。すると、自然と衝突を避けるようになるんですね。

チームとしての生産性を強化するならば、チームメンバーがそれぞれの得意領域の専門性を発揮して、互いの専門性を尊重しながらぶつかりながらも、共通のゴールに向かって一緒に戦略を組み立てていくコラボレーションが理想です。これからは先の見えない世界。単なる仲良しじゃ、仕事の上で遠慮が起きるだけマイナスです。だから、組織力の磨き方も、今までとはちょっと違う方向性を試みてはいかがでしょう?言葉で言われなくても相手の気持ちを測るのはもともと得意なので、あとは組織全体を見渡す視野と、多様性を認める文化があれば、強力な組織が作れると思うのです。でも残念ながら、そういう行動様式って、頭では理解できても、普通は経験レベルでは刷り込まれていないんですよね。

個人的には、BI の中でもパフォーマンス マネジメント分野のアプリケーションでよく実装されている 「戦略マップ」が有効だと思っています。ここのところ経営手法としては流行らなくなってきましたが、「バランス スコアカード」の標準ツールの 1つです (流行らない理由も自分なりの分析はありますが、それはまた別の機会に)。組織の目標をまず、財務、顧客、社内プロセス、学習と成長、の 4つの視点に分けて、目標間の関連性を矢印で結びます。そうするとたとえば、「従業員満足の向上」 により 「納品リードタイムの短縮」 が達成され、それにより 「顧客ロイヤルティの向上」 がもたらされ、「収益性の向上」 が達成される、のようなフローチャートが現れてきます。これが組織の戦略であり仮説になる。そして自分が組織の全体戦略に対してどのような位置づけなのか、自分の業績を上げるには誰と協業すべきなのか、その人はどういうミッションを持って活動しているのか、を絵で理解できるようになります。社長の訓示なんかとは比べ物にならないほどの情報量と示唆を持っているのです。

BI は基本的に、単独の個人知性を向上させることを目的として発展してきました。OLAP なんてまさにそう。顧客ニーズを発掘したい、と思えば、顧客のプロファイル、購買履歴、Web アクセスログなどかき集め、多次元データベースに集計して、あっちから見たりこっちから見たり、切ったり張ったり転がしたり。いろんな視点から眺めることにより、表面化していない事実を見つけ出します。でも、いくらテクノロジーを使ったって、バイアスが強ければやっぱり表面化していない裏側って見えないものです。資質というより習慣の問題ですから。だから BI ツールはなかなか日本に定着ないのです。

スピードの時代ですからそうも言ってはいられないですし、一サラリーマンとしては、何があってもいいように知性レベルは伸ばさなきゃいけません。でも組織としてみた場合は、個人一人一人の個性や素質に依存するのではなくて、今ある能力を組織で共有したり最適化したりするほうが、つまり組織知性の向上を目指すほうが、今の日本企業には向いていると思うのです。2 + 2 = 4 を 4 + 4 = 8 にするよりも、同じ程度のコストで 3 * 3 = 9 にするほうがどう考えてもお得ですし、リスクも低いはずです。

米野宏明@マイクロソフト

※ 本エントリーの内容は筆者個人の見解に基づいており、マイクロソフトの見解を示すものではありません。

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プロフィール
米野宏明(Hiroaki Komeno)
マイクロソフトのBI関連製品担当プロダクト マネージャ。慶應義塾大学商学部 卒業後、直接金融時代の到来を予期して証券会社に入社するも、時代が早すぎた ようで3年で挫折、手に職をつけるため一念発起してITベンチャーに転身。デー タベース製品の営業、マーケティング、SEと幅広く経験するも、当該製品の開発 元が買収されたことをきっかけに諸事情あってやむを得ずマイクロソフトに移籍。 チャネルマーケティング、コンサルティング営業を経て現在に至る。経産省認定 テクニカルエンジニア<データベース>。日本CFO協会主任研究委員。
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