海上自衛隊が気軽に国家機密を漏らした事件。イージス システムの技術がどのぐらいすごいものなのか知らないのでそのあたりに突っ込む気はありませんが、情報漏えい事件としては実にありがちな話。逮捕された三等海佐は一次情報を入手する権限のある人で、「よかれと思って」 学校の教官に渡したそうです。その情報を別の教官がコピー、ご丁寧に学生やその後乗艦した先の部下などにコピーさせたとか。それが巡り巡って問題の不法入国の中国人女性の夫である自衛隊員の手に渡ったと。個人的には、合法不法を問わず国防の中核にいる自衛隊員が外国籍の女性と生活を共にしていいのかという疑問がありますが、それはさておき、相も変わらず情報漏えいがなくならないのは、「性善説」 と 「価値観の相違」 が原因なのかとおもいます。そしてそれは、これからの大競争時代を生き抜くためには致命的な問題です。
取り調べの最中でしょうから詳細な情報が出てきませんが、コピーした人たちは、この情報が機密情報であることはもちろん十分認識していたはず。それにもかかわらずこれほど情報が拡散したのは、「よかれと思って」 という言葉が象徴するように、相手が秘密を守ってくれるだろうと信じていたからなのでしょう。同期の親しい人間だから、信頼のおける部下だから、勉強熱心な学生だから、きっと自分を裏切ったりしないだろう、断わるとまるでその人を疑っているみたいし。この情報が機密情報であることはみんな知っているから、扱いにも気を付けてくれるだろう、みんな日本の国益が大事だし。
ところがまさしくコピーと一緒で、こういう善意の前提は劣化します。たいして勉強熱心でもないけどたまたま隣の人と一緒にコピーをもらえちゃった学生、そんな情報持っていても自分では何にも使いようがないけど秘密だって言われるとつい覗いてみたくなる部下などを経由することで、最終的には日本の国益なんて気にしない人がそれを手にする危険性が指数階級的に高まります。ないしょ話がすぐにないしょじゃなくなるのと同じ理屈です。情報の価値は持つ人によって変わるものですが、その価値の差が大きい人の間で、すなわち価値観の異なる人の間で漏えいリスクが高まるのではないでしょうか。
もちろん今回の件は組織における情報管理体制の問題です。しかし根底には、皆同じような価値観を持ち、性善説で生活してきた日本文化があるように思います。性善説で成立する社会、日本のいいところであったわけですが、残念ながら世の中が変わってきてしまいました。世界中からいろいろな価値観が伝わってきますし、特に積極的に欧米の価値観を取り入れたのは自分たち自身でもあります。もちろんそれがいい悪いという話ではなく、それを理解した上で変わっていかなければいけないところもあるということです。いまさら鎖国するわけにもいきません。
もう、同じ日本の住人だからといって、価値観までは共有できない時代です。大事な年金基金で、過疎地にどうにもセンスのないリゾートを作っちゃう。ゆとり教育を主導した文部科学省の役人がいつの間にか詰め込み型学校の理事におさまっている。きっとそれぞれに事情はあるのでしょうが、少なくとも私にはその価値観が理解できません。しかし残念なことに、性善説社会は価値観が合う人同士でしか成立せず、そこでは価値観の異なる人が簡単に勝つことができます。悲しいことですが、これからは個人個人が価値観の相違に対して意識を高めるほかにないようです。
※ 本エントリーの内容は筆者個人の見解に基づいており、マイクロソフトの見解を示すものではありません。
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