目標管理がもたらす弊害、の正体

2008年04月20日 22:15
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またもやセミナーシーズンが到来してしまいました。新しい製品を担当しているので仕方ないのですが、毎月何度も同じ製品の話をちょっとずつ違う切り口で話すのって結構大変です。今週あと 1 つマイクロソフト主催カンファレンスが残っていますが、来月も日経 BP やらガートナーやらのセミナー登壇、パートナー企業と共催の CPM (Corporate Performance Management) セミナーや日本 CFO 協会でのセミナーが待っています。
あそうそう、パフォーマンス マネジメント分野に興味があるような方は、ぜひ 5 月 22 日午後にマイクロソフト主催で実施する CPM セミナー (場所は新宿) にお越しください。日経やガートナーは有料ですけども、こちらは無料。コンサルタントに方法論や実例をお話しいただきますから、単なる製品セミナーではありませんし。

さて、興味の湧く時事ネタも特になかったので、今回はパフォーマンス マネジメント関連のキーワードである 「目標管理」 について。とはいえ、MBO (Management by Objective) そのものについて語るつもりではありません。評価制度としての良いところ、悪いところはたぶん出尽くしているでしょうし、「バランス スコアカード」 と同じ一種の 「心得のようなもの」 で、計算式や確立したモデルがあるようなものでもないですし。なお、「MBOは定着しなかった」 などと書かれているところもありましたが全くそんなことはなく、一般的な大企業の多くは MBO に基づく評価制度のバリエーションを当たり前に使っています。今回考えてみたいのは 「目標」 と 「管理」 の語の解釈。MBO は果たして 「目標管理」 あるいは 「目標による管理」 でいいのかどうか、つまり Objective = 目標?Management = 管理?ということ。

言葉は風土や文化に根ざしています。たとえば日本の主食は米ですから、米、ご飯、粥、舎利など、使われる場所やその状態によっていろいろな単語が存在します。一方英語ではただの Rice で、Steamed や Fried などの形容詞がついてようやく別のものを指します。逆に日本では普通 「パン」 と呼ぶものにも、英語では Bread、Toast、Roll、Bun、Baguette と、やはり形状や状態によっていろいろな単語がありますよね (最後のはフランス語ですけど)。

日本語の 「目標」 とは普通どんなものを指すでしょう。和英辞典で調べてみると、「目印」という意味で mark や sign、「標的」 という意味で target、「目的」 という意味で goal や aim、objective が割り当てられていました。国語辞典によれば 「そこまで届こうと狙うもの」 のようです。もちろん辞書ごとに違いはありますが、感覚的にはだいたいこんなものでしょう。

一方「Objective」 の日本語訳は、「目標」 や 「目的」 だったり。軍事用語でもあるようで、「目標地点」 「目的地」 というのもあります。うぬ?Targetと何が違うんだろう、と英英辞書をひくと、「Military target: the target or goal of a military operation」 とあります。行動のターゲットであって、すなわち成果のターゲットじゃない、ってことでしょうかね。まあ辞書の説明を辞書で引くと無限ループに入ることもありますから、多少の残尿感には目をつぶりましょう。あ、そうそう、懐かしい英文法における 「目的語」、S+V+O の O でもありますね。V の動詞を受けるものですから、やはり行動や動作のターゲットなのでしょう。成果のターゲットなら S+V+C の C (Complement) のほうが合いそうですしね。また、Objective は名詞でも形容詞でもあるようで、形容詞の Objective の訳で最初に来るのは 「客観的」。次に 「公平な」 「実在の」 と続きます。強引に一言でまとめるなら、「こうしたい具体的な将来像」 となりましょうか。

それで、皆さんはいかがです?「目標」 と聞いた時イメージするものって、そんな 「Objective」 ですか?普通 「Target」 か 「Goal」、つまり、「行動」 ではなく 「成果」 についてイメージしませんかね?たとえば Objective は 「顧客満足を向上する」 ことであって 「顧客満足度指数平均を 6 にする」 ことじゃない。顧客満足を測定するならリピーター数やらなんやら、疑似的に測定する代替手段はありますから。でもつい最初に 「指数 6 をとること」 を Objective にしがち、「手段が目的になる」 ってやつです。もっとも、この例はわかりやすすぎるので、こんなところで引っかかる人は少ないかもしれませんが、現実はもっと微妙な世界ですから、いつの間にやら成果測定が目標になっていること、結構多いと思います。でもそれはしょうがないのかもしれません、日本語の 「目標」 ってそういう意味ですから。しかし、そんな目標を持たされた人はかわいそう。一緒に仕事する周りの人はそんな不毛な数字の執着に振り回されますから、本人がこのことを自覚していない限り、間違いなく煙たがられます。MBO に限らず、輸入物の経営手法が実行段階で失敗する原因は、この程度のレベルの話じゃないかと思うのです。

もう一つのキーワード 「管理」 もまたこれがひときわ怪しい。むしろ目標なんてかわいいもの。我々マーケターも、とりあえず何だかわからないものを組み合わせておくとそれっぽくなるので、「企業業績管理による次世代のIT経営革新」 とか言ってみたりして。でもそう言ってる本人も何だかよく分かっていなかったり。長くなったので、このネタは次回にまわします。

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プロフィール
米野宏明(Hiroaki Komeno)
マイクロソフトのBI関連製品担当プロダクト マネージャ。慶應義塾大学商学部 卒業後、直接金融時代の到来を予期して証券会社に入社するも、時代が早すぎた ようで3年で挫折、手に職をつけるため一念発起してITベンチャーに転身。デー タベース製品の営業、マーケティング、SEと幅広く経験するも、当該製品の開発 元が買収されたことをきっかけに諸事情あってやむを得ずマイクロソフトに移籍。 チャネルマーケティング、コンサルティング営業を経て現在に至る。経産省認定 テクニカルエンジニア<データベース>。日本CFO協会主任研究委員。
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