Is A House Not A Home?

June 14, 2005 01:29 PM
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ノベル社でLinux戦略を担当するマット・アセイ(Matt Asay)が、オープンソース関係のニュースを扱うニュースサイトNewsForgeにDoes
'community' still exist in open source?
という論説記事を書いている。日本のjapan.linux.comにもその邦訳を掲載しておいた。

アセイの議論の背景にあるのは、ようするにオープンソースの歴史において英雄伝的な時代が終ったということではないかと思う。いわゆるバザールへの参加者が増えるに従って、ごく少数のハッカーがコミュニティ全体を代表することが曲がりなりにも可能だった時代が終わりを告げた。現在オープンソース・コミュニティは、さまざまな思惑を抱いた多様な主体から構成される世界へと変貌を遂げつつある。簡単に割り切ってしまえば、ハードコアなフリーソフトウェア原理主義者やボランティアと営利企業との、往々にして緊張関係を孕んだ共存だ。そして、後者がコミュニティに占める割合が、徐々に増えつつある。

アセイにしろ私にしろ、この方向性自体は歓迎すべきことだと考えている。ボランティア・ベースにのみ支えられたプロジェクトは、結局のところ参加者に無理を強いてしまうからだ。「タダ働き」を前提とした運動は長続きしない。そもそも「オープンソース」とは、前述のような状況の具現化を目指して新たに造られた言葉でもあった。その上でアセイが危惧しているのは、このような方向性が徹底された結果、参加者が抱く漠然とした「コミュニティ」への帰属意識が失われ、口コミによる営業効果や企業レベルよりも徹底したQA(品質管理)など、オープンソースならではの美点とされてきたポイントのいくつかが損なわれてしまうのではないか、ということだろう。とりあえずそんな美点が現在でもまだ存在しているかどうかはさておき、確かに一部の人々のオープンソースへの関り方は功利主義的な見地からは理解が難しい。それらが営利企業の跋扈により総て失なわれてしまうと、オープンソースの躍進を今迄支えてきた推進力は大きく削がれてしまうかもしれない。

しかし、あっさり言ってしまえば、私はこれは仕方がないのではないかと考えている。そもそもソフトウェアは機能や利便性、あるいはコストでのみ評価されるべきで、それはオープンソースであっても変わらない。歴史的に見て、アセイが挙げたような善意のボランティアに依存した長所がしばらく存在したとしても、それをいつまでも維持できると考えるべきではないだろう。言い換えれば、ユーザに何か心情的な上げ底をしてもらえなければプロプライエタリ(独占的、非オープンソース)なソフトウェアと拮抗できないのであれば、それは現在におけるオープンソースの限界を示すものとして謙虚に捉えるべきなのだ。むしろ、そういった上げ底抜きでどこまでやっていけるのかを考えなければならない。そこでこそ、オープンソースの真価が試されるよう。

アセイは営利企業が開発者コミュニティに配慮せよと説く。具体的にどうせよとは書いていない。私は、営利企業と開発者コミュニティは不即不離で行くのが良いと思う。営利企業が開発者コミュニティに特段の配慮をすべきだとは思わないのである(寄付などしてくれるぶんには歓迎だが)。営利企業がすべきことは、基本的にはソフトウェアのライセンス条件をきちんと守ることに尽きると思う。あとはおまけに過ぎない。このあたりはもう少し突っ込んだ議論が必要になるが、それは次回以降に取り上げることにしよう。

アメリカン・ポップスを代表する作曲家Burt Bacharach(1928-)の名曲A House Is Not A Homeは、感情の通い合いが無い二人の暮す家(House)は家庭(Home)たりえないことを歌ったものだ。しかし、恋愛はともかく、別に感情が通わなくても、ただ共存するだけで意味がある関係というのはありうる。オープンソースにおける営利企業と開発者コミュニティとの関係は、そのようなものではないかと私は考えている。

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プロフィール
八田真行(Masayuki Hatta)
1979年生まれ。高校時代に米国ニューヨーク州に留学。東京大学経済学部卒。同大学大学院経済学研究科修士課程修了。現在同研究科博士課程に在籍。専攻は組織戦略論、法と経済学。高校在学中にFLOSS(Freeor Libre & OpenSource Software)関連の活動を開始。2000年よりDebian Project 公式開発者。2003年よりGNU Projectのtranslation coordinator。その他、スラッシュドットジャパン編集者、japan.linux.com主筆などを務める。
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