キャストの真実

February 14, 2008 8:00 AM
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「ほら、見て」
入場をすませ、ゲートを通った俺たちは、噴水広場に出た。
さくらに促され見た光景は、いきなりの行列、行列、行列。

そしてそこには見慣れたキャラクターがいた。

プーさんと写真を撮ろう、そしてミッキーと写真を撮ろう。

そんな記念写真を求めて親子連れ、
そしてカップル達は並んでいた。
「一緒に撮ってみよっか」

思いがけないさくらの言葉に俺は嬉しいのか、嬉しくないのか、
複雑な感情を抱いたまま列へと並んだ。
あぁ、大好物のラーメン屋の行列だってあまり並んだことがないのに。。。そんなため息をよそに普段見せない笑顔で待つさくらを、
俺は横で見ていた。

「やっぱりディズニーランドって楽しいね」
すっかりハイテンションになったさくらとともに、まずはどこに行こうか相談を始めた。

「そうねぇ、やっぱりプーさんかしら」
そう敷地の北東の方にある“プーさんのハニーハント”アトラクションへ向かった。
「私ね、小さい頃からディズニーのビデオを見て育てられたの。ほら、知らない?ビデオで英語を学ぼうってやつ。あれよ。」
生まれてこの方、あまりディズニーには縁がなかった。
それにミッキーだって、何がかわいいのかがよくわからない。
でも、みんなは熱狂的になる。何がそんなにいいのだろう。
俺はずっと不思議だった。

「へぇ、それは知らなかったなぁ。だからさくらは英語が出来るのか。
大学時代、外国人の友達とかいたもんなぁ」
「へへっ。だから私はリスニングは結構得意なのよ。小さい頃から鍛えられてるからね。」
「でもすごいよね。そんな小さい頃からディズニービデオを見てたら、そりゃ、好きになるよな。それにディズニーランドのキャラクター達ってたくさんいるし、どれかは自分が好きなキャラクターがいるんだろうし」
「そう、気づいてきたわね。そこなのよ。実は“夢と魔法の国”は大人から子どもまで楽しめる、というのもポイントでね、さらに顧客との接点、つまりコンタクトポイントをたくさん持っているの」
「コンタクトポイント?なんだ、それ。」
俺は初めて聞く言葉に驚きつつ問い返した。


「“夢と魔法の国”というのはお客さまへの守るべき約束、よね。そしてそれをどのように実行し、行き渡らせるか、それが重要よ。そしてそのブランドを体験する場所、つまりブランドと顧客との接点はどこなのか。その接点がコンタクトポイントよ」
「なるほど。さくらは小さい頃からビデオという形で“TV”でディズニーに触れている。そして俺は知らず知らずのうちに“映画”という形でディズニーに触れている。そして現代のメディアは“ウェブ”へと移行し、さらに“セカンドライフ”という3次元のメディアでみんなは今後ディズニーに触れる機会があると言うことか。」
「その通りよ。“ブランド”は企業の競争力に大きく影響するわ。でもそこで大切なのは、ブランドの“約束”を忠実に一貫してそれぞれのコンタクトポイントで表し、体験してもらうことなの。例えば、ディズニーの場合、私のように小さい頃からキャラクターに触れる子ども達は多いわ。そして大きくなって、ディズニーランドに来てどこでブランドを体験するかというと、、、」
「すべて、だな」
「そう、ディズニーランドに来ている時間すべてがコンタクトポイントよ。だからお客さんが体験するすべての体験、すべての空間にブランドの“約束”を埋め込んだアトラクションと空間を用意する必要があるの。」
「難しいなぁ。それはつまりテーマとか、コンセプト、と言われているものかな」
「そうね、テーマパークとかアトラクション企画ではそんな風に呼ばれているけどね。でも体験についてはどうかしら。ディズニーランドに来たお客さんが、トイレに行き、電車に乗り、買い物をして、アトラクションを楽しむ。それこそいろんな行動をするわ。その中でも、具体的に接点を持つのがアトラクションの案内人である“キャスト”であり、時々園内に登場するディズニーキャラクター達なの。一説ではミッキーは同時刻に園内には1カ所でしか現“約束”を守っているからなの。“利益”が基準じゃないのよ」
「そうだなぁ、やっぱり人間やキャラクターが居てくれないと、楽しくないし、ミッキーがたくさんいたら、なんか嫌だな」
「そして、それこそがブランドを表す重要なコンタクトポイントになるし、ウェブでは体験できないことなの。セカンドライフはそのブランド体験を豊かにするためのツールとしては最適だと思うわ。」
「しかし、、、まだメディアとして大きいとは言えない。日本人ユーザー登録数が百万人弱では、、、。だからこそ、セカンドライフだけではなく、クロスメディアでウェブと連動して、さらにはアナログメディアでも接点を持ってそれぞれの特性を活かして展開する、これがいいのかな。」
「そうね、上出来よ。タクミもなかなか素質あるんじゃない?」

そういうとさくらは前方に現れた“プーさんのハニーハント”の入り口を見つけて言った。

「あれよ、あれ〜。一度入ってみたかったんだ〜」

さっきまでの凛々しいさくらはただの無邪気な子どもに変わっていた。これも、ディズニーの魔法。

今日はいろんなさくらが見れそうだ。
俺はため息をつきつつも期待して、また苦手な行列に並んだ。

(このブログの著者でもある大槻透世二さんがSecond Lifeでの「ものづくり」を紹介する「Second Life 新世界的ものづくりのススメ」。第37回は、『エンジン6』。こちらもご覧ください)

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プロフィール
大槻透世二(Toyoji Ohtsuki)
サイバーアドベンチャー(株)代表取締役社長/CEO
Linden社推薦 Second Lifeセミナー講師
東北大学心理学専攻卒業。1年間のLA留学を経て、ソリッドレイ研究所でバーチャルリアリティのシステムインテグレーションを経験。IT系コンサルティング会社を経て、デジタルハリウッド大学大学院コンテンツマネジメント修士課程修了(MCA)。その後、Linden Lab本社にてSecond Lifeの直接トレーニングを受ける。現在デジタルハリウッドにて「Second Life」セミナーを開催。また、バーチャルリアリティ、メタバース関連のシステム開発/プロデュースを行うサイバーアドベンチャー(株)を設立。
雪華(Yuki)
北海道出身。高校生の時にマンガ家デビュー。在学中に作品を残し引退。現在、会社員として勤務しながら、ライター業もこなし小説家修行中。
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