4月13日、サンフランシスコ空港近くのハイアットホテルで開かれたセールスフォースドットコムのプライベートセミナーに参加した。非常に盛況で、実際に導入しているクライアントがパネラーとして発表があり、将来のユーザからも何がよかったのかなど、さまざまな質問が飛び交っていた。本件は、顧問先企業の要請によって、経営管理及び会計システムの高度化の要請が発端で、CRMと会計システムとのリンクがどの程度できているものなのか、またCRMがどれほどコンプライアンス対応されているか知りたく参加したものである。
ご存知の通りセールスフォースドットコムは、CRM(Customer Relationship Management)の代表的なソリューションベンダーの一社である。カスタマーリレーションシップマネジメントとは、IT用語辞典e-wordsによると「情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法のこと。詳細な顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理することにより実現する。顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、顧客を常連客として囲い込んで収益率の極大化をはかることを目的としている。」とある。
米国ではすっかり企業の基盤システムの一つとなり、多くの企業が採用している。CRMは日本でも大変期待をされたのだが、個別論は別にして、CRMそのものの普及率はまだ10%程度だという話で、米国に遅れを取っている。セールスフォースドットコムは世界で2万社以上に採用されており、リンクして機能アップさせるアプリケーションも多数紹介されている。しかし、同社が提供する「AppExchange」上では、全世界で200以上も存在するのに対し、日本国内では30弱しかない。本当に定義どおりの効果が現れているのならば、売れてよいはずだがなぜだろうか?米国で売れた理由はもっと別のところにあるのではないかと考えた。
以前サンフランシスコの本社を尋ねる機会があって、運よくジム・スティール社長にお会いして直接話を聞くことができた。しかも社長室に案内してもらい、実際にデモを見せてもらった。自社のセールス担当者一人ひとりのデータを見ながらで、実際に社内で利用しているものであり、非常に迫力のある話であった。
「今の時点で、Tom(仮名)の目標の達成率が一番よくない。前期は、どうかな?」と、前期の数字を示して、「ああやっぱりよくない。販売金額はそれほど悪くないんだが、達成率が低い。だけど今期、また高い目標値を申請しているね。できもしない過大な目標を立ててしまう傾向にあるんだろう。こうした連中の申請した目標値は、割引率を高めて計画に盛り込むことができる。この通り、わが社のシステムは、経営トップがデスクにいながらにして、末端の営業マン一人ひとりのパフォーマンス現況を瞬時に見ることができる。」本気か冗談か、「Tomには警告を出さなきゃいけないな。」と言った。説明を受けながら、このシステムの顧客管理のすばらしさを実感したというよりも、「これは、一人ひとりが四六時中、監視され裁かれてしまう閻魔大王様のようなソリューションだ」と恐怖すら感じた。個人的には自分の会社には採用して欲しくないものだと思った。
営業成績が悪いのは立派な解雇理由となる。解雇のためには、それを実証する客観的なデータが必要である。もちろん誰も好き好んで解雇をしたい人はいなく、営業マンをアメとムチをうまく使って働かせたい。そのために、文句の出ない客観的な評価の仕組みが欲しい。また、最終的な売上の数字だけを見るだけでは、真の問題点はクリアにならない。クライアントへの訪問件数とか、そこから何件具体的な話に持ち込んで提案書を出したか、その成約率はどれだったとか細かく見ていかないと、経営環境が原因なのか、商品力が原因なのか、それとも営業マンが単に油を売っているためなのかどうか判断できない。CRMは営業マンのあらゆるプロセスまできちんと見ることが可能であるため、実態把握ができるのである。
また、成績の悪かった営業マンは、その場をしのぐために、次は絶対にがんばりますと言って、高い目標を掲げてしまうだろう。それを鵜呑みにして商品を準備したらすぐに在庫の山になってしまう。営業マンがみんな大風呂敷を広げてしまうと、仮に販売成績は良かったとしても、結果的には会社は大きな損害を被る。
日本ではどうだろうか。営業成績が悪いからといってクビにはしない。通常は、営業に向かないとして内勤にするまでだ。そもそも、日本では、担当者―係長―課長―部長―役員、時には社長と、組織全体で営業を取り組むことも少なくなく、誰に責任あるのかよくわからない状態になっていることが少なくない。米国は、基本的には担当者単位で、責任の所在は明確である。しかも、営業マンはちょっとでも目を離すとサボると思われており、トップは管理が必要だと認識している。
だからこそ、米国ではCRMが売れたのだと思った。一方、日本では個人のパフォーマンスよりも、むしろチームとしての成績が重視される。個人評価はチームへの貢献度と称して上司がつけるのである。日本ではCRMの費用対効果があまり出にくいと言われる所以であろう。CRMの最終的な目的は顧客満足度の向上とあるが、それ以前に、営業マンに対する閻魔帳としてのニーズが強かったのではないかと思う。日米の環境の違いが取組みの温度差を生んでいるのだと思った。日本も、個人を客観的に評価することの必要性が認識されれば、CRMはもっと普及すると思う。
(Koji Tokuda;徳田浩司)
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