米国IT企業の営業方法の進化(2)−Webセミナーからテレビ会議へ

November 13, 2006 07:25 PM
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国土の広い米国におけるIT企業の営業方法
米国IT企業の営業方法の進化について、前回のお話をもう少し掘り下げてみたいと思う。国土の広い米国においてIT企業における営業は、日本とは違った動きが必要とされる。大手企業なら別だが、全米各地にオフィスと営業マンをおいて、訪問販売ごとく全米の企業を一社一社回るというわけには行かないのである。ベンチャー企業の場合には、リソースが限られてしまうからだ。

やはり、関心のある人だけをどこかに集めることが必要だが、大都市でのカンファレンスへの出展は有効である。そのため、ラスベガスなどで派手なカンファレンスを開き、大々的に全米から人を集めるスタイルが流行した。一例がコムデックスである。企業の購買責任者や上位者などを無料招待するが、遠方のため日帰りというかけにはいかない。当然ながら、前後にはゴルフ、夜はギャンブルやナイトクラブというエンターテインメントを提供して遠出するインセンティブを与え、囲い込みを行って、上得意客や見込み客をすっかり買う気にさせて帰すわけである。日本で、銀座で宴席を設けたり、接待ゴルフを行うのと同じようなものである。しかし、あまりに派手なものは、バブル崩壊とともに廃れてきた。

それから、コールセンターによって、見込み客に電話をかけまくるやり方。これも、それなりに効果はあるのかもしれない。しかし、数を追えばコストが馬鹿にならず、今度は、インドやフィリピンなど英語ができて、賃金の安い地域にオフショアリングによるコスト削減を行ってきた。どこからかで入手したリストをもとに手当たり次第あたるのである。あるとき、流暢な英語ではあるがアジア系っぽい訛を感じたので、「どこからかけているのか?」と聞いたら「フィリピンだ。」という回答が得られたことが幾度とある。しかし、これも手当たり次第であることには変わりなく、まだまだ非効率である。

インターネットと無料雑誌を使い的を絞った営業方法
米国では無料の雑誌やニューズレターの配信が非常に盛んである。日本でも、最近は無料の雑誌が流行ってきているようであるし、無料のニューズレターは種々たくさんある。とにかく最初は無料とすることで読者数を増やし、どこかで有料化を進めるようなビジネスモデルだったのだろうと思われるが、そのまま無料が続いている出版物も少なくない。おそらく、スポンサーからの広告費が増え、採算が取れるようになったからであろう。いろいろな無料雑誌が提供されており、かなりバラエティーに富んでいる。それだけ、効果があるものだとスポンサーがつくようになっている。

おかげで無料と言っても内容は結構レベルが高い。スポンサーからの技術情報などの提供も受けているためであろう。読者アンケートを取って、新しい技術に対するユーザ動向などの独自の情報も提供されており、マーケティングに非常に役に立つ記事が多い。無料であるがゆえに読者数も増やせる上、登録時や、更新時に、無料読者としての資格があるか審査を設けることで、事細かく顧客情報をインプットをさせることができる。無料でうれしいと思ったが、一旦登録すると、その後さまざまなベンダーからのアプローチを受けるはめになる。読者の関心ある分野や、決裁権限、企業内での予算の情報、投資計画など細かく聞いてくる。ベンダーからの情報提供はOKか?という項目は、もちろんそうしないと、審査に通らず、無料配布されない。出版社側としては、ただで有益なユーザ情報を収集することができるのでこれ以上の方法はないだろう。これを武器に、広告料をたくさんとることで、無料配布が可能となっているのである。もちろん、顧客情報は、マーケティングに使っている。

顧客データに基づきWebセミナーの実践
上記のように行えば、多くの企業の情報が幅広く拾える。ベンダーとしては、対象になりそうな読者層をピックアップし、適宜Webセミナーの案内を流し、セミナーの登録をさせればよいのである。実際には、1時間ぐらい時間が取られるので、本当に関心がないと見てくれない。そのため、かなり関心の高く、見込みの高そうなクライアント候補を拾い上げることが可能となる。あとは、Webセミナーを実施する前あるいは後に、電話やメールで、営業スタッフがフォローをして、相手の実際の関心やセミナーを見た感想を聞き出し、それに応じて営業に持ち込めばよい。金になりそうであれば、相手の個別のニーズに合わせて更に詳細なデモを見せたり、技術スタッフとの電話会議をセットしたりする。そこでも、Webセミナーのシステムが登場する。オフィスにいながらにして、営業マンが全米に向かって営業を実施することが可能になったのである。こうしたやりとりを何度もやって、本当に見込みが高くなったと思ったら、その時点ではじめて客先に出かけていけばよく、無駄足が少なくなる。無駄な移動時間とコストを削減することが可能で、少人数の営業マンで回すことが可能となる。場合によれば、担当者が米国にいる必要はなく、営業マンのオフショア化すら可能となる。実際にこれを実践して、コストダウンと戦力アップに成功している会社がある。

日本では、こういうスタイルの営業と言うのは、まだ余り進んでいないと思われる。日本は会わないと話が進まないというケースが少なくなく、国土が狭いため、営業マンがでかけて営業することができるため、あまり進んでいないようである。

今後は映像を用いた手法が大きく広がる可能性
さて、上記は今までの流れであったが、今後はどうなるのだろうか?ここからは私の予想であるが、次の展開は、インターネットによる映像を使った営業方法が進んでくるのではないかと思われる。

広がりつつあるビデオクリップの利用
まずは、ビデオクリップという方法である。これはあらかじめ録画されたもので一方方向ではあるが、5分ぐらいにまとめたものをオンデマンドで配信するスタイルが広がっていくと思われる。ZDNet自身も開始したものである。きれいに作られた、音声だけ、アナウンサーのような上手なナレーションでは、どうしても機械的に感じ、抵抗感がある。その反面、ベンダーの社長や、営業担当VP、あるいは開発のヘッドなどが、決して上手いとは言えなくとも、自分の言葉でプレゼンを行ったほうが、一生懸命さが伝わり、親近感を感じる。Webセミナーでは、現時点ではスライドとデモの画面だけで、画像を送るというのは行っていないが、ブロードバンドの普及とともに、増えてくるものと思われる。

YouTubeのGoogleの買収によって、インターネットにおける映像の可能性について、広く認識させることになった。言葉だけではなく、画像を加えることで情報量が爆発的に増え、短時間でも強力にメッセージを伝えることができる。また、誰もが手軽に情報発信することが可能となるということも、広く理解されることになった。

近い将来テレビ会議による営業の可能性
そして、次の動きであるが、営業の現場に、テレビ会議の導入が進むのではないかと思われる。これには、インフラである、Webカメラの普及が前提となる。実際に、最近、Webカメラのユーザ数が増えてきていることを感じる。既にWebカメラ標準装備のモバイルPCや、液晶画面などが発売されている。今後、普通のPCにも多く搭載されてくるのではないかと思われる。その原動力になっているのが、Skypeのテレビ電話である。Skypeの無料電話自体はかなり浸透してきていて、テレビ電話も利用されるようになっている。例えばスターバックスやカンファレンス会場などで、パソコンに向かってテレビ電話を行っている姿を見かけるようになった。特に遠距離の会議に国内外とのやりとりに使っているケースが増えている。

従来、テレビ会議と言えばPolyconを用いたものが有名であるが、これはワンセット何十万円もする高価なものである。専用の会議室を用意しなければならないので、コストは非常にかかる。しかし、PCで代用できれば、手軽で、非常に安く済む。Skypeは無料の上、Webカメラも、せいぜい数千円だ。PCとインターネットを用いてならではこその新しい営業のスタイルが確立されてくる。

コミュニケーションの調査によると、対面でコミュニケーションをする場合、言葉によるものは7%に過ぎず、声やトーンが38%、表情やしぐさに依存するものが55%もあるということらしい。ということは、メールやインターネットだけだと7%、電話を加えると45%、テレビ会議にすると、100%となり、電話だけに比べて、2倍以上に効率が上がる。たとえ、ベンダーからクライアント候補に対する一方方向だとしても、顔の見えない相手だと非常に不安だが、顔が見えると聞いているほうも安心するだろう。

ブロードバンドの環境が進み、配信技術が進むと、こうした手段を用いた営業方法が普及してくると思われる。ますます距離を感じさせなくなってくのだろう。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

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徳田浩司(Koji Tokuda)
Fusion ReactorのCEO。東京大学工学部卒。三和銀行に入社し、傘下の総合研究所にてシステムコンサルティング業務、銀行でM&A、新事業開発支援、ベンチャー投融資に従事した。2000年三菱商事金融部門に転職、日米のベンチャーファンドへの投資業務に携わった。2004年に独立、米国シリコンバレーに拠点を移し、日米のベンチャー企業のサポート業務、投資業務、IT・金融ビジネスのコンサルティングに従事中。
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