シリコンバレーからの年賀状−IT業界の抱える構造的問題

January 4, 2007 03:41 PM
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1月1日、2007年展望の記事を紹介がてら、知人などに年賀メールを送ったのだが、いろいろと反響があった。「サービス」の話と、人口動態の問題を絡めた話である。みなさんそれぞれの分野で、真剣に考え始めている。さまざまな産業の中で、特に、システムインテグレーションなどエンタープライズコンピューティングの世界は、輸出がほとんど存在しないドメスティックな産業であるため、人口動態の影響を最も受けると思われるので、ここにご紹介したい。

明けましておめでとうございます。

シリコンバレーから2007年展望をお送りします。
http://japan.zdnet.com/sp/feature/07sp0010/story/0,3200081627,20340130,00.htm

日本の人口は50年後に現在の4分の3に縮小
ところで、昨年末に発表になった数字によりますと、50年後日本は40%以上が65歳以上の老人国家となると同時に、人口も9000万人を割るということです。これまでは、年金システムが維持できることをアピールするために、厚生労働省も1億人ぐらいにとどまるだろうと言っていたのですが、年金改革を進めるために、とうとう本当の数字を公表しました。

50年後ミドル層(生産人口)が3分の2にも激減する影響は計り知れない
一方、米国の人口は50年後には4億人を越え、今後も経済成長を続けます。これまで日米の経済規模の差は1:2と言われていたのですが、1:4に拡大します。もっと恐ろしいことに、社会の中心となって仕事をやっているミドル層(30代・40代)の世代の人口は現在の3分の2まで縮小しますから、日本の起業家の数も激減します。米国も同じく少子化が進むのですが、そこは移民の国、開かれたビジネスチャンスをえさに、世界中から優秀な人材の興味を集め、彼らをセレクトしながら、ミドル層を次々と補充して行きます。新入りである彼らが、米国民の雇用を奪うのではなく、新しい産業、企業を起こし、新しい雇用を創出していきます。

その話は、ご興味あれば以下をご参照ください。
http://blog.japan.zdnet.com/tokuda/a/2006/08/it_it_2.html
これを見ると日本の産業界、VC業界の前途は決して明るいとは言えません。

今後は国内での慢性的な人材不足が続き国際競争力が低下の懸念
しかし、実はそんな遠い話ではなく、細かく統計を見ると2010年以降は、ミドル層の人口から先に減ってきますので、人材不足とマーケット縮小が深刻になります。ヘッドハントの仕事もやっているのでよくわかりますが、金融やハイテクを含めてすでに一部の業界ではそういう状況になっていて、景気が悪くなっても人材不足(もちろん優秀な人材ということですが)が続きます。今後はその状態がさまざまな産業に広がっていくと思われます。日本の企業が今後も日本語だけで経営を続けるならば、優秀なミドル層以上の人材の供給は細ってきますので、国際競争力の観点では、かなり厳しくなると感じています。良質の人材を得るには例えば英語での経営も取り入れ、国際化しないとなかなか厳しいかもしれません。

これからは海外市場への進出を真剣に考えるべき
また、今はそれなりに景気も回復しているのでみなさん国内重視でやっていますが、これからの日本は内需拡大が見込めず、市場を世界に求めるしかありません。商社が、90年代に冬の時代と言われながらも、2000年以降復活したのは、投資会社に変革し、市場とビジネスと人材を海外に求めたからだと思います。今後は非常に厳しい時代になりますが、一部の企業を除き、外への目はまだまだあまり向かれていません。

日本の高い品質のサービスやものづくりにおいて競争力を発揮すべき
日本には、非常に高い品質のサービスやものづくりが存在します。これは大いに自信を持ってよいと思います。そして、日本人がどんどん外に出て行って、日本の企業が活躍できる場を増やしていくことができると思っております。しかし、ハードやソフトウエアという「プロダクト」だけでは、中国やインドなどの追い上げも激しく生き残るのは大変です。すぐに真似のできるモジュール化したプロダクトだけに依存するのではなく、その上位概念のシステムであるサービスとして提供していき、品質による差別化を図っていくことが必要だと思います。私は、それが日本の生き残る道だと考えております。

更に、体力のある今のうちに海外の成長性の高い企業やビジネスに投資をしておいて、日本の市場が縮小し、例えビジネスがなくなっても、寝ている間にちゃりんちゃりんとお金が入ってくる仕組みを作り上げておく必要もあると考えております。そのために、国際的な投資、それを支える金融サービスは非常に重要です。企業や年金基金は、成長性の高い分野や市場などに投資を行い、国際化を進めるしかありません。海外へのプライベートエクイティへの投資やM&Aが必要だと思います。それはできるだけ早くスタートしておく必要があり、そして、そこに日本の高い品質の「サービス」を加え競争力を高めることで、日本発の新しいビジネスモデルで成功することができるのではないかと私は考えています。

体力のある今のうちに海外投資・海外進出に取り組まないと手遅れになる可能性
もちろん、口で言うほど簡単ではなく、さまざまな困難を伴います。その先兵として日本を飛び出して米国にやってきましたが、現実に私もさまざまな困難に直面しております。しかし、決して不可能なことではなく、できるものと確信いたしました。他社がまだやっていないからとか、自分には力がないからという理由で、あと回しにするべきではないと思います。体力のある今のうちにスタートしないと、10年後、20年後では、日本の企業も年金も体力が落ちてきます。そのときには、外に出て行く余力がなく手遅れになります。あとになればなるだけできることは限られてくると思います。

こういう話をいろんな経営者の方にしてきたのですが、50年後の話は自分が生きている間の話ではないためか実感がないようで、総論賛成だが各論はまだあまり本気でお考えにはなっておりません。一部は真剣になってお考えいただけました。しかし、実際にはすぐに目の前の問題となります。すでに市場のパイが増えず、会社の成長が実現できなくなっている企業の方は、私の申し上げていることが、少しはご理解いただけるのではないかと思います。

今年も、いろいろな場面で日本と世界の「Fusion!」を実現させる「Reactor」になりたいと思っております。何卒よろしくお願いいたします。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

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プロフィール
徳田浩司(Koji Tokuda)
Fusion ReactorのCEO。東京大学工学部卒。三和銀行に入社し、傘下の総合研究所にてシステムコンサルティング業務、銀行でM&A、新事業開発支援、ベンチャー投融資に従事した。2000年三菱商事金融部門に転職、日米のベンチャーファンドへの投資業務に携わった。2004年に独立、米国シリコンバレーに拠点を移し、日米のベンチャー企業のサポート業務、投資業務、IT・金融ビジネスのコンサルティングに従事中。
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