J-SOX対応は本当に大丈夫か?(8) −取引見直の可能性?

January 21, 2007 05:00 AM
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Michael Oxley氏登場
久々に米国SOX関連の話題を一つ。12月にJ-SOXの指針が出たこともあり、そちらの話でもちきりで、日本ではあまり話題にならなかったようだが、米国でも大きな動きが出てきた。先月、東海岸に出張する機会があり、ホテルで時差ぼけのまま何気なくケーブルテレビをつけたところ、ニュース番組で、オハイオ州選出の共和党の下院議員がスタジオに登場していた。どこかで見たことのある顔だ、と思ったが、連邦議会の金融委員会委員長のMichael Oxleyとありすぐにわかった。メリーランド州選出の上院議員Sarbanes氏とともにSOX法案の草案を作成したオックスレー氏だった。先月、SOX法の緩和政策が動き始めたことに対し、意見を求められて、スタジオに呼ばれていたのだ。

緩和に向かって動き出した米国SOX法
緩和の内容は以下の要旨である。
SOX法における第404項において、企業の内部統制が定められているが、SEC(米国証券取引委員会)は、2006年12月適用を一部緩める運用指針案を採択した。今後、70日間公開し一般から意見を聴取し、本式決定されることになる(2007年3月ごろ本採択の見込み)。さらに、PEACB(上場企業会計監査委員会)も同様の緩和措置を決定した。今回の指針案では、経営者の裁量で文書化の適応範囲を削減することが可能となり、監査意見書も減らすことが可能となる。さらには、外国企業への負担も軽減されることになる。あまりリスクのないような項目まで、大きな手間を取らせている現状の膨大な作業を行うことは減るのではないかと期待される。

米国において多大なるベンチャー企業への影響
さてOxley氏だが、緩和策に対しては「歓迎である」とコメントしていた。また、ニュースキャスターからの質問のみならず、全米各地からのさまざまな視聴者からと直接電話で会話をしていた。大企業の社員などから、口々にSOX法に対する批判的な意見と緩和策に対して期待する意見を述べていたが、非常に印象深かったのは、シリコンバレー選出の議員のコメントであった。「SOX法のせいで、ベンチャー企業の上場が容易でなくなり、ベンチャーキャピタルが投資を回収できなってしまった。投資家がお金を出さなくなったために、新しいビジネスにお金が回らなくなり、アメリカの産業振興に大きな障害となっている。ベンチャーへの配慮を行って欲しい。」というような要望であった。

指針がなく安全を見て過度に対応
オックスレー氏は、法律の改正はせずに、SEC等での運用で緩和措置を取っていくことは歓迎しているようである。これまで、内部統制の404項の運用は、企業のトップに委ねられることになったが、企業トップのみならず監査法人に対しても罰則規定が厳しかった。エンロン事件で、アーサーアンダーセンが解散に追い込まれたのは記憶に新しい。一方、指針が明確ではないため、監査を行う監査法人としても、どうしても安全を見て非常に厳格な適用になりがちであった。大企業に対しては2004年から実施されているが、当初考えていたよりも、はるかに多額のコストと負担を与えてしまったとして、SOX法は大きな批判を浴びていた。更には、小企業への影響が無視できず、IPOへの負担があるとして、ベンチャー企業のIPOが低調となってしまったと言われている。さらには、米国市場での負担を敬遠し、規制のゆるいロンドンAIM市場が受け皿となっている。米国の資本市場からも、ビジネスの機会を奪ったとして、緩和策が求められていたものである(ただし実際のところ、小企業への適応は複数回延期が実施され先送りされているのだが)。

なお、余談であるが、Oxley氏は、歴代共和党が圧倒的に強い地域から選出されているが、前回2004年の選挙で苦戦した。地元からの反発も強かったようで、今回の任期で引退することを表明している。どうやら言いだしっぺであるSabanes氏もOxley氏も、SOX法が多大なコスト負担となるなど想定外の動きとなってしまっており、その影響が産業界の足を引っ張ることになったことについては、実際には困ったことになったという様子が伺えた。もちろん、本来の趣旨でいうと、上場企業のガバナンスが強化されたことで、株式市場が健全化されたというプラスの側面があったことは事実で、現在のニューヨーク株価が調子がよいのも、その要因の一つであろう。

日本における今後の予想
さて日本だが、実施基準とIT統制のガイドラインが発表された。適応範囲は決算に対し重要な影響を及ぼすものを対象とするという話で、これは米国SOXの改革を先取りしたもので評価できる。ただし、対象企業が、子会社だけではなく資本関係がなくても、アウトソーシング先も対象になる可能性があり、実際にどこまで運用できるのか、疑問である。足元、SOX対応が足踏み状態であるが、さすがにそろそろ動き出さないと手遅れになってしまうだろう。国内だけでなく、海外の子会社をどうするのか、それについては、早めに手を打っておく必要があると思われる。

J-SOX未対応を理由に取引見直しの可能性?
本場米国では、資本金75百万ドル(約100億円)以下の小規模企業に対しては、4度延期がなされており、まだ実行されていない。一方、日本だが、小規模企業だからといって、適用外の規定はないようである。しかも、子会社、持分適用会社も対象となるため、対象企業は多い。また、上場企業から投資を受けた企業、それから資本関係がなくても、アウトソーシングビジネスを行っている企業も対象になる可能性がある。範囲が広大なのだ。そのため、アウトソーサーについては、J-SOX対応していないことを理由に、取引の見直しの動きが出てくるかもしれない。今後弾力的な運用がなされるかもしれないのだが、未公開企業だからといって他人事ではない。動向には注意が必要だ。

(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz

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プロフィール
徳田浩司(Koji Tokuda)
Fusion ReactorのCEO。東京大学工学部卒。三和銀行に入社し、傘下の総合研究所にてシステムコンサルティング業務、銀行でM&A、新事業開発支援、ベンチャー投融資に従事した。2000年三菱商事金融部門に転職、日米のベンチャーファンドへの投資業務に携わった。2004年に独立、米国シリコンバレーに拠点を移し、日米のベンチャー企業のサポート業務、投資業務、IT・金融ビジネスのコンサルティングに従事中。
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