エンジニアのサバイバル時代?

2007年12月14日 10:34
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 フィリピンの国家統計局(NSO)が12月11日に発表した10月の輸出額は、前年同月比10.5%増の46億4,761万米ドルで、1月以来の2けた成長を示すとともに、過去最高額に達した。全体の61.8%を占有する電子部品が同9.4%増の28億7,347万米ドルに回復している。同局の担当者はNNAに対し、10月の輸出額が過去最高となったことを確認した。電子部品の内訳をみると、74.6%を占める主力の半導体が9.9%増の21億4,265万米ドルに拡大したほか、医療・産業機器と消費者向け電子機器が倍増を記録した。ここのところペソ高で、輸出産業にとっては、悪材料だが消費は確実に伸びている。来年の成長に大きな期待を寄せるビジネスマンも多い。
 12月になって私は住居をマカティ市からモンテルパ市のアラバンへ移した。ここはマカティとは違って、カリフォルニアのサンノゼやパロアルトを思わせる町並みだ。アラバンには「アヤラ・アラバン」という地区があり、セレブやお金持ちが多く住んでいる地域だ。従って地価も非常に高く、プール付きの大きな家が建ち並んでいて、フィリピンのビバリーヒルズといったところだろうか。セキュリティは行き届いており空気のきれいなビレッジである。私の住む地域は、そこから少し離れた最近開発され始めた「フィルインヴェスト」という地域になる。中心には「フェスティバル・モール」がありそこから八方に道が延びている。この周囲では、フィリピン名物のジープやトライシケル(サイドカー付きのバイク)などの商売用の乗り物の乗り入れは厳しく制限されている。マンションは、建設が始まって間もなく、この地域で5棟ほどしかない。もちろん価格はマカティ市に負けないくらい高い。しかし、環境の良さという点では申し分ない。高層の建物もなく、車の交通量もすくない。
 私の住むマンションのすぐそばには、「ノースゲート サイバーゾーン」という一角があり、ここには銀行やコンピュータ・メーカーなどのコールセンターが林立している。今も、コールセンターが入るビルの建設は続いている。ここには、デルやHSBCなどのコールセンターもある。コールセンターは、フィリピンを代表する産業になっている(http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=05001229)。フィリピン人の多くが英語を話すことができるということと、人件費が他国に比べて圧倒的に安いということが、コールセンター産業の成長の背景にある。
 最近私は、様々な産業でのIT活用に関して調査をするために、訪問インタビューを開始した。その第1号は、Ayala Systems Technologiesだ。フィリピンでも有数のITインテグレータで、以前からMFG/ProやJDエドワーズなどのERPを扱っている。現在は、ハードウェアの販売が売上の多くを占めているようだ。1997年に私がプロデューズした「E.S.S.P. 97」というERPの世界初専門展示会で「アジアITサミット」というのを企画したことがある。そこにフィリピンを代表するIT企業の一つとしてパネリストとして招待をしたのがこの会社との最初の縁だ。すでに従業員数は170人に達している。現在、千葉県の幕張にASJという名の日本法人も設立し、JFE出身の神田(こうだ)さんが社長を務めている。この日運良くマカティ市で神田社長にお会いすることができた。どのような商売をASJで予定されているのだろうか?基本的にはオフショア、アウトソーシングのようであるが、とくにオープンソースを活用したインテグレーションを目指す日本企業のインキュベーションを実施されているところがユニークといえるかもしれない。
 「日本のソフトウェア・エンジニアのほとんどが英語を話すことができない。今までのように人件費の面にメリットを見いだして、アジア各国のIT 企業とつきあう時代は終わった。」と神田さんは強調される。私も同感だ。ITの世界ではブラジル、中国、インドが注目され、次にベトナム、フィリピンなどへの注目が始まっている。アメリカやヨーロッパの企業は、比較的うまくこういった国のIT企業とつきあっているが、どうも日本企業でうまくいっているケースは少ない。慣習、労働感、働いているときの態度、人付き合いの仕方、などなど難しい面があるようだ。また、様々な国で、「日本は重要な市場だ。従って、日本のパートナーは最重要視しなければならない。」という外資企業のトップ演説をよく聴いたものだが、実際にはその言葉ほど日本企業に目をむけている企業は多くないというのが私の印象だ。フィリピンも然り。オフショアの多くは、アメリカやヨーロッパが相手である場合が多い。日本人が思っているほど諸外国は目を向けてくれているわけではないと私は感じる。その背景には、日本人の英会話能力が確かにある。「約束を守る。時間を守る。」を普遍の原理のように美化するところも、つきあいにくさの一つに違いない。話を元に戻すと、フィリピンには本当に質の高いソフトウェア・エンジニアが多くいる。また人なつこい性質でもあり、英語を学びながらエンジニアリングに携わるにはよい環境だ。日本人が想像している以上に教育の質は高く、隠れた人材の宝庫かもしれない。
 私も長らくアメリカ企業で仕事をしたが、入社して2年間はまともに英会話ができなかった。アメリカから突然マネージャがやってきて、会議から報告書まですべてが英語の世界に変わってしまった。何度かやめようと思ったことがあったが、先輩の指導もあって何とか乗り切った経験がある。20代の後半のことだ。でもその経験が今まさに役立っている。最新の情報を手に入れるためには英語は必須だ。世界のエンジニアと仕事をするためにも英語は必須だ。
 私は、Ayala Systems Technologiesが始めたインキュベーションが、新しいインパクトを日本のソフトウェア産業に与えることを期待してやまない。

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若井 直樹(Naoki Wakai)
メインフレームでのソフトウェア開発に携わり、データクエス ト、ガートナーグループ、ITRなどでエンタープライズアプリケーション戦略を 分析。その後、シンクライアントメーカーにて市場開拓に寄与。
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