Googleのエンタープライズ戦略を読む

2006年10月05日 23:10
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 さて前回よりエンタープライズサーチについて書いているが、今回から各社の戦略について取り上げていこう。エンタープライズサーチのベンダーには大きく4つのグループがある。第一グループは、従来よりエンタープライズシステムに関わってきた「エンタープライズ」企業。IBM OmnifindOracle Secure Enterprise Search等、多様な企業内コンテンツに対して、統合、大規模、セキュリティ、といったキーワードでサーチを行うのがポイントだ。第二グループはGoogleを筆頭にする「Web」企業。Webの世界での圧倒的なユーザーエクスペリエンスをベースに「企業内でもGoogleを」を掛け声に急成長を遂げている。
 この2つが2大巨頭であるが、もう一つの軸として「どうやってゴミ箱から宝石を探し出すか」に特化をしている企業もある。1つは「テキストマイニング」アプローチ。コンテンツに含まれる文字(テキスト)を解析し、検索結果の精度を上げる仕組みだ。日本ではJustsystemのConceptBase、米国ではVivisimoが有名だ。一方で、ユーザーの行動履歴やその知識といった人にフォーカスをあてた「ソーシャル」アプローチもある。当社リアルコムはこの分野に強い。
 今日はまずこの4グループのうち、一番気になるだろう「Web」を代表するGoogleの戦略をご紹介したい。

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■Googleの尖兵:Google Search Appliance

 Googleが日本で現在エンタープライズ向けに展開しているのは、エンタープライズサーチエンジンGoogle Search Appliance(GSA)とデスクトップ検索ツールGoogle Desktop Enterprise(GDE)の2つである。米国ではこれに加えて、Google Earth、Google MapsのEnterprise版もあるが、これらはサーチと言うよりは地図ビジネスに特化しているため今回は議論からはずす。現時点でのGoogleのエンタープライズ戦略の目玉はGSAだ。
 GSAはGoogleの検索テクノロジーを黄色い色のサーバーに詰め込んだアプライアンス製品だ。この製品を社内に導入するだけで、社内のウェブサイト、文書ファイル、データベース等のコンテンツをGoogleで検索できるようになる。

GSA_beautyshot.jpg

 GSAの特徴は大きく3つある。1つはその検索精度だ。検索エンジン導入プロジェクトでは導入後に「思ったほど欲しいコンテンツが見つからない」とお客様が落胆することが多い。しかし、GSAに関してはWebで培ったGoogle独自のアルゴリズムによってかなり期待に沿う検索結果が出てくる。GSA検索精度を確かめたい人は、自分のPCにGoogle Desktopを入れて、自分のPCのファイルを検索してみるといい。驚くほど欲しいコンテンツが見つかるはずだ。
 2つめの特徴が、システム面でのスケーラビリティである。Googleは世界中のWebコンテンツを取り扱っており、1万台以上のサーバーを分散運用していると言われている。エンタープライズにおいてもそのスケーラビリティは圧倒的であり、GSA1台で300万ドキュメントを検索できるが、もし検索対象となる文書数が増えたらその上にGSAを更に1台、もう1台と追加していけば自動的にスケールさせることができる。
 3つめの特徴がインターフェースである。GSAとGDEを利用するとインターネットのGoogleのインターフェースとエンタープライズサーチが完全に統合される。例えば、皆さんがgoogle.co.jpを開くと、「ウェブ イメージ ニュース マップ グループ デスクトップ」とコンテンツの格納先が表示されると思うが、この横に「ファイルサーバー」「データベース」と出てくるイメージだ。そのためユーザーは、インターネット、エンタープライズを統合した1つのインターフェースで最高の検索エンジンでコンテンツを検索できるのである。
 しかし何よりも他のサーチエンジンとの違いは、その圧倒的なユーザーエクスペリエンスだ。これまでのお客様は「検索をやりたいんだけど何がいいかな?」と聞いてくることが多かったが、最近は「Googleがやりたい」とご指名でお問い合わせが来ることが多い。これは、やはり誰もがインターネットの世界で欲しい情報をGoogleで見つけたというエクスペリエンスがあり、それを企業内でもやりたいと連想するからに他ならない。


■GSAはEnterpriseの橋頭堡?

 GSAの話は分かった。それでは、GoogleはGSAを使ってエンタープライズで何をしようとしているのか。単に黄色いハコを売りたいだけなのか。そうではないだろう。Googleのエンタープライズビジネスの売上は急成長しているとはいえ、Google社全体の売上げの数%を占めるに過ぎない。依然、Googleは世界最大の広告代理店なのだ。だとすると、GSA・GDEはGoogleにとってなんなのか?
 ここからあとは推測なのだが、GSAはGoogleにとってエンタープライズの橋頭堡なのではないかと思っている。実は、CIOマガジンのインタビューでGoogleのエンタープライズ事業の責任者デーブ・ギルアード氏は「今後Gmail、Gtalk、Blogger、Orkut等のエンタープライズ事業展開が計画されている」と答えている。これは先日ご紹介したGoogle Apps for your Domainのように、無料でWeb経由のサービス(広告ビジネス)として展開されると考えられる。しかし、単にGmailのASPだけでは、ユーザーID管理やセキュリティなどエンタープライズの要件を満たさずに、エンタープライズに導入されない可能性が高い。
 しかし、このときにファイヤーウォールの内側にGSAが入っていると話は違う。GSAのサーバーの上に、ユーザーID管理やセキュリティなどのエンタープライズのニーズを満たす機能を追加し、インターフェース上でWeb経由の各種サービスと統合する。そうすると、ユーザーからみるとWeb経由のサービスとGSAがシームレスにつながりつつ、セキュリティやID管理などの要件も満たせる。さらに、デスクトップ環境にGDEが備わっていれば、更にPCにも楔を打ち込むことができる。GSA、GDEという橋頭堡をうまく活用し、今後計画されているWeb経由のサービスを次々とエンタープライズ環境に提供しようとしているのではないか?そしてそれはもちろん、世界最大の広告代理店のメディアの対象を広げるために。

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 とまあ最後は邪推も入ったが、次回はGoogleのエンタープライズ戦略に落とし穴はないか?について述べたい。

(吉田健一@リアルコム

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プロフィール
吉田健一(Kenichi Yoshida)
リアルコム取締役、Chief Marketing Officer。一橋大学商学部卒。戦略系コンサルティングファーム、ブーズアレンのコンサルタントを経て、情報共有・コンテンツマネジメントソリューションを手がけるリアルコムの創業メンバー。同社ではコンサルティング・マーケティング部門を統括、ソニー、NEC、三菱東京UFJ銀行、ニコン、ファイザーなど国内大手企業の情報基盤戦略に関するコンサルティングを多数手がける。情報共有、ナレッジマネジメント、ポータル、次世代情報基盤などのテーマの第一人者。著書に「この情報共有が利益につながる」(ダイヤモンド社)等。
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