Google Appsのもう一つの意義〜ポータルは死んだ

2007年03月02日 00:47
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 Google Appsの話題がホットである。メディア記事の多くは「Googleがマイクロソフトオフィスと激戦」「本格的なSaaS参入」といったトーンであるが、Google Appsにはもう一つ大きな意義がある。それはエンタープライズ2.0時代のポータル、すなわち「マッシュアップポータル」の到来であり、これまでのポータルに対する死刑宣告でもある。

 ちょうどここ1週間で、いつも参考にさせていただいているみずほ情報総研吉川さんのブログやアリエルネットワークス徳力さんのブログでも、エンタープライズ2.0時代のポータルとして「Startpage」や「パーソナライズドホーム」に関するエントリーがあったことも、このテーマが注目を集めていることの証左であろう。

 こうした2.0時代のポータルのことを総称して「マッシュアップポータル」と呼び、Google Appsが投げかける意義について説明してみたい。


■マッシュアップポータルとは何か?

 Google Apps Premier Editionには「スタートページ」という機能がある。これはGoogleパーソナライズドホームのサービスをエンタープライズ対応したものでGoogle Appsのポータル機能といえる。スタートページを使うと企業毎のポータルを簡単に作ることができる。

 見た目はいわゆる普通のポータルであるが使ってみるとちょっと違う。まず一つ一つの情報のハコは「ウィジェット」と呼ばれる。ウィジェットは単なる情報の小窓ではなく小さなアプリケーションであり、スケジューラー・時計・メモ帳などの機能をポータル上で実現できる。ユーザーは世界中の人が作った多くのウィジェットライブラリの中から自分で好きなものを選ぶことができる。ポータル画面上ではドラッグ&ドロップでウィジェットの位置を変えたりタブをどんどん増やしていくこともできる。使ってみるとその操作感には、病みつきになってしまう。

 こうしたマッシュアップポータルをもっと本格的に体感できるのが、netvibesというベンチャー企業のマッシュアップポータルである。


netvibes.gif

 できることはGoogleのスタートページと同じであるが、提供されているウィジェットライブラリの豊富さや、Ajaxを使いこなした軽快な操作感はGoogleよりも秀逸である。また、RSS/ATOMフィードウィジェットや、GmailやFlickrなどのWeb APIを利用した他サイトウィジェット等、2.0の世界をまさに体言しているといってよい。是非一度、試して欲しい。


■これまでのポータルとの違い

 それではこうしたマッシュアップポータルは、これまでのポータルと何が違うのだろうか。

 1つめの違いは、「ウィジェット」という考え方そのものにある。これまでのポータルでは情報の小窓は「ポートレット」と呼ばれており単純に情報を表示するだけであった。しかし、ウィジェットは小窓ではなくアプリケーションである。しかもWeb APIを介し他のWebサービスを動的に呼び出すことができる。そのため、GmailやAmazonやFrickr等のWebサービスを呼び出し、ポータル上で動的なアプリケーションとして活用できる。こうして、ポータル上でメールを書いたり、本を買ったり、写真を見たりできるようになり、ユーザーのエクスペリエンスは大いに改善される。

 2つ目の大きな違いはプラットフォームフリーであることである。これまでのポータルは製品毎の規格がありそれに縛られていた。例えばマイクロソフトのSPSには「ウェブパーツ」という規格があり、この規格に対応したものでなければSPSには表示できない。ある会社がSPSを使っていて、子会社が他社のポータルを使っているとすると、親会社の「ウェブパーツ」を子会社のポータルに表示はできない。連携させるためには全てのインフラをSPSで統一する必要があり、親子ならまだしもグループ会社や取引先とポータルの情報を共有しようとすると無理な話となってしまう。

 ところがマッシュアップポータルの基本的な考え方はプラットフォームフリーである。あくまでWeb APIを介してWebサービス上のアプリケーションを呼び出す仕組みになっており、ポータルは問わない。つまりWeb APIにだけ対応していれば、どのマッシュアップポータルでもGmailを読むことができるわけだ。

 このようにウィジェットという考え方がマッシュアップポータルをこれまでのポータルとは異なるものに仕立てあげているわけであるが、このウィジェットの規格自体の統一の動きもある。現在ウィジェットの規格は主にGoogle Widget、Yahoo Widget、Vista Widget、Mac Widgetと4種類あるが、W3CではWidgets1.0というウィジェットの規格統一の検討も行われている。

 またWidgets1.0を待たずにnetvibesではUniversal Widget APIなるものを展開していおり、種類の異なるウィジェットを相互に利用できる仕組みを用意しつつある。

 こうしたウィジェットのテクノロジをベースにすることで、エンタープライズ環境のポータルでも、企業内、グループ会社、他の企業、インターネット等の様々なWebサービスから情報を呼び出し、マッシュアップポータル上で活用することができるのである。

 Google Appsのもう一つの意義はエンタープライズの世界に「マッシュアップポータル」という考え方を持ち込むというところにある。その結果、既存のポータルの考え方は一気に時代遅れとなってしまうのである。



吉田健一@リアルコム

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吉田健一(Kenichi Yoshida)
リアルコム取締役、Chief Marketing Officer。一橋大学商学部卒。戦略系コンサルティングファーム、ブーズアレンのコンサルタントを経て、情報共有・コンテンツマネジメントソリューションを手がけるリアルコムの創業メンバー。同社ではコンサルティング・マーケティング部門を統括、ソニー、NEC、三菱東京UFJ銀行、ニコン、ファイザーなど国内大手企業の情報基盤戦略に関するコンサルティングを多数手がける。情報共有、ナレッジマネジメント、ポータル、次世代情報基盤などのテーマの第一人者。著書に「この情報共有が利益につながる」(ダイヤモンド社)等。
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