GoogleのPostini買収に見るエンタープライズ2.0の本気度

2007年07月17日 17:36
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 ここ1週間、夏休みを頂いいて投稿が遅れました。今年は、映画「サイドウェイ」的な「人生の寄り道」がしたくてナパ/ソノマバレーに行ってきたのだが、バレーついでにシリコンバレーのUSオフィスに寄って開発チームと議論したりして、あまり日常と変わらなかった...


■PostiniがもたらすGoogle Appsへの安心感

 先日、GoogleがPostiniというあまり知られていない会社を買収した。「またどうせGoogleが買収しただけでしょ?」と思われるかもしれないが、今回の買収はちょっと違う。Googleが始めて、本格的なエンタープライズの企業を買収したのである。この買収は、Googleのエンタープライズ2.0への本気度を如実に表している。

 Postiniは電子メールセキュリティのリーディングベンダーだ。スパム・ウィルスブロック等のメールフィルタリング、メールアーカイブ、送受信ポリシー管理をASP形式で提供しており、世界3万5千社以上に導入されている。その高い技術力には定評があり、世界のエンタープライズソフトの番付表であるGartnerのマジッククアドラントでもシマンテックやマイクロソフトと並んで、右上に位置している。

 GoogleはこのPostiniを企業向けGoogle Appsに連携させて提供する。これまでGoogle Appsは中小企業や教育機関等を中心に爆発的に広がってきたが、こと大企業に導入しようとすると、メールセキュリティ・アーカイブがネックになることが多かった。CallenderやSpreadsheetは問題ないとしても、メールだけはきちんとしたポリシーに基づいてフィルタリング・アーカイブしたいというニーズが強く、いくら安価でもGoogle Appsを諦めざろうを得ない大企業が多かった。

 PostiniがGoogle陣営に加わることで、Google Appsは強力なメールフィルタリング機能を持つことになる。自社でExchangeサーバーを立てるよりよっぽど高いセキュリティが実現されるとなれば、大企業でもGoogle Appsの採用が進むことが想定される。いわば、Google Appsに非常に大きな「安心感」をもたらすことになるのである。


■Google対マイクロソフトは一方通行の戦い

 「これでGoogle対MSの構図もはっきりしてきたな」と思う人もいるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。Googleが何度も言っているように、Googleはマイクロソフトと戦うつもりはない。

 マイクロソフトとGoogle。この2社の最も大きな違いはなにか。それはこの2社の業界が全くことなるのである。マイクロソフトは売上5兆円を越える世界最大のソフトウェア会社。世界150兆円とも言われるIT市場におり、主に企業のIT予算で生計を立てている。お客様は予算を持っているCIOであり情報システム部である。

 一方Googleはソフトウェアを作っているようにも見えるが、実は売上1兆円を誇る世界最大の広告代理店である。世界で4兆円とも言われており、毎年30%以上の成長を遂げているインターネット広告市場が彼らの主戦場だ。Googleの検索サービスは、広告を配信するためのコンテンツ、テレビでいうところの番組である。お客様はGoogleを使うユーザーではなく、GoogleにAdseseやAdwordsといったインターネット広告を載せる世界中の広告主なのだ。Google検索アプライアンスやGoogle Apps等のIT予算で売上げを立てるエンタープライズ部門もあるが、その売上げは全体の1%に満たない。

 つまり、MicrosoftとGoogleではそもそも、戦っているホームグラウンドが違うのだ。GoogleはGoogle Appsというマイクロソフトスイートの代替品にもなりえるソフトウェアを開発したが、その意図は大きく異なる。Googleはソフトウェアを無料で提供し、ページビューを稼いで広告を載せたいのであり、ソフトウェアを売りたいわけではない。例えば、Google Appsは日本大学50万人への導入が決まり話題を集めた。しかし、最も驚くべきことは、このGoogle Apps Education Editonは全くのタダなのだ。Googleは別に慈善事業で日本大学にAppsを提供しているのではない。50万人のユーザーに対して広告を配信する広告代理店としてのビジネスを粛々と行っているのである。

 このように、Googleはマイクロソフトと戦う気はない。でも、マイクロソフトはそうは言っていられない。日本大学の50万ユーザーにOfficeやExchangeを売る機会を失ったのである。そこで、マイクロソフトは広告業界に参入し、Windows Liveをはじめとするサービス群を立ち上げたのであるが...

今回ばかりは少々厳しそうである。



吉田健一@リアルコム

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プロフィール
吉田健一(Kenichi Yoshida)
リアルコム取締役、Chief Marketing Officer。一橋大学商学部卒。戦略系コンサルティングファーム、ブーズアレンのコンサルタントを経て、情報共有・コンテンツマネジメントソリューションを手がけるリアルコムの創業メンバー。同社ではコンサルティング・マーケティング部門を統括、ソニー、NEC、三菱東京UFJ銀行、ニコン、ファイザーなど国内大手企業の情報基盤戦略に関するコンサルティングを多数手がける。情報共有、ナレッジマネジメント、ポータル、次世代情報基盤などのテーマの第一人者。著書に「この情報共有が利益につながる」(ダイヤモンド社)等。
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